「Rewrite The Stars」は、星に書かれた運命を受け入れるのではなく、愛する二人で未来を書き換えようとする歌です。
映画『グレイテスト・ショーマン』でザック・エフロンとゼンデイヤが歌った楽曲を、アン・マリーとジェームス・アーサーがカバー。MVでは映画の場面を再現せず、近づこうとする声と離れたままの身体によって、簡単には結ばれない恋を描いています。
「Rewrite The Stars」は運命を書き換えるという意味
「Rewrite」は、すでに書かれたものを改めて書き直すこと。「Stars」は夜空の星を指すだけでなく、英語表現では運命や宿命を連想させる言葉です。
そのため「Rewrite The Stars」という曲名は、あらかじめ決められた運命を二人の手で書き換えるという意味で受け取れます。
歌詞では、男性側が周囲の決まりや立場を越えて一緒になろうと訴えます。一方の女性側は、二人きりの場所では愛し合えても、外の世界には簡単に越えられない壁があると返します。
愛する気持ちが足りないのではありません。気持ちは同じなのに、二人を取り巻く現実だけが動いてくれない。その食い違いが、この曲を単純な恋愛成就の歌では終わらせていません。
『グレイテスト・ショーマン』の恋を別の声で再解釈
原曲は、映画『グレイテスト・ショーマン』でザック・エフロンとゼンデイヤが歌ったデュエットです。社会的な立場や偏見に隔てられた二人が、自分たちの未来を選べるのかを問いかけます。
アン・マリーとジェームス・アーサーによるバージョンは、2018年のアルバム『The Greatest Showman: Reimagined』に収録されました。
映画の登場人物として歌う原曲に対し、このカバーでは二人の声質そのものが物語を作っています。
ジェームス・アーサーは、低く擦れた声で相手との距離を押し縮めようとします。アン・マリーは、明るい声の輪郭を保ちながら、希望だけでは進めない現実を返します。
一人は「変えられる」と歌い、もう一人は「それでも難しい」と答える。同じメロディを歌っていても、立っている場所が違うことが声から伝わってきます。
廃れたサーカス劇場が二人の距離を広げる
ハンナ・ラックス・デイヴィスが監督したMVは、イギリスのリヴァプール・オリンピアで撮影されました。古い劇場を、放棄されたヴィクトリア朝サーカスのような空間へ作り変えています。
豪華な装飾やダンサーの身体表現が目を引きますが、映像の中心にあるのは華やかさではなく、広い空間に取り残された二人の距離です。
二人は同じ劇場に存在しながら、すぐには一つの画面や物語へ収まりません。近づこうとする動きと、それを遮るような空間の広さが繰り返されます。
このMVでは、豪華な劇場が恋を盛り上げる舞台ではなく、二人を隔てる壁として機能しています。
映画の恋愛場面をそのまま再現しなかったことで、階級や立場といった具体的な障害は、触れたくても届かない距離へ置き換えられています。
声が重なる瞬間だけ未来が近づく
歌い出しでは、二人のパートがはっきり分かれています。一方が思いを伝え、もう一方が現実を返すため、歌というより対話を聞いている感覚があります。
サビで二人の声が重なると、それまで別々だった願いが一瞬だけ同じ方向へ動きます。伴奏に声を埋もれさせず、二人の異なる質感を前へ出しているため、ハーモニーが感情の接点として聞こえます。
ジェームス・アーサーの声は、少し無理をしてでも未来を引き寄せようとするように響きます。対するアン・マリーは、声を強めながらも完全には迷いを消しません。
二人が一緒に歌うほど希望は大きくなるのに、次のパートでは再び別の立場へ戻ってしまう。その繰り返しが、サビを待つたびに胸の奥を少し落ち着かなくさせます。
運命への反抗は、成功したまま終わらない
曲名だけを見ると、二人が運命を書き換えて結ばれる歌にも思えます。しかし歌詞は、愛があればすべて解決すると言い切りません。
自分たちの手ではどうにもできない状況を示す表現が残され、二人の思いと現実は最後まで完全には重なりません。
だからこそ「Rewrite The Stars」は、希望だけを歌う曲ではなく、変えたいと願うことと、本当に変えられることの間にある痛みを描いた歌として響きます。
タイトルでは星を書き換えると宣言しながら、物語は書き換えきらない。その未完成さが、映画の登場人物を離れたアン・マリーとジェームス・アーサーのカバーにも強い引力を残しています。
この曲で見えるのは、アン・マリーの軽快なポップだけではない、相手の声を受けながら感情の角度を変える表現力です。「2002」や「FRIENDS」など異なるタイプの代表曲と聴き比べると、その振れ幅がさらに分かります。

