なぜ「This Love」はマルーン5の突破口になったのか|MV解説

Maroon 5「This Love」は、デビューアルバム『Songs About Jane』期を象徴する代表曲です。
鋭いピアノリフ、ファンク寄りのグルーヴ、終わりかけの恋を描く歌詞が重なり、甘いだけではない“危うい恋愛感”を強く残します。
MVでは親密な映像とバンド演奏が交差し、初期マルーン5の色気とポップさが一気に伝わる作品になっています。

目次

なぜ「This Love」はマルーン5の突破口になったのか

「This Love」が印象に残る理由は、曲の入り口からすぐに耳をつかむピアノリフにあります。

ロックバンドらしい演奏感がありながら、ただ激しいだけではなく、ファンクやR&Bのような跳ねるリズムが入っているため、聴き心地はかなりポップです。重すぎず、軽すぎず、少し大人っぽい。このバランスが、初期マルーン5の個性をはっきり示しています。

Maroon 5は『Songs About Jane』から「Harder To Breathe」「She Will Be Loved」「Sunday Morning」なども生み出していますが、「This Love」はその中でも、バンドの色気・グルーヴ・キャッチーさが最も短時間で伝わる曲です。

初めて聴く人にも分かりやすく、音楽ファンが聴いてもリズムやアレンジに引っかかりがある。そこが、この曲を“ただの恋愛ソング”で終わらせていないポイントです。

歌詞で描かれるのは、終わらせたいのに戻ってしまう恋

タイトルの「This Love」は、直訳すれば「この愛」ですが、曲の中ではきれいな愛というより、相手に振り回されながらも離れきれない関係を指しているように響きます。

歌詞の語り手は、恋愛に疲れているのに、完全には断ち切れない。そのため、曲全体には未練、怒り、欲望、諦めが混ざったような感情があります。

面白いのは、メロディやリズムがかなり軽快なことです。歌詞だけを見ると苦い恋愛なのに、サウンドは踊れるほどノリがいい。このズレがあるから、「This Love」は失恋ソングでありながら、暗く沈みすぎません。

英語表現としても「This Love」というシンプルな言葉が効いています。特定の誰かとの恋というより、「こういう恋そのもの」に名前を付けているようなニュアンスがあり、聴く人が自分の経験を重ねやすいタイトルです。

ピアノリフとファンク感が作る“明るいのに苦い”中毒性

「This Love」の聴きどころは、冒頭から繰り返されるピアノのフレーズです。

このリフがあることで、曲はすぐに認識できます。ギターが前面に出るロック曲というより、ピアノとリズム隊が曲を引っ張っていくため、都会的で少しソウル寄りの印象があります。

特に魅力的なのは、Adam Levineのボーカルが軽やかに聞こえるのに、歌っている内容はかなり苦いところです。声の明るさと歌詞の痛みがぶつかることで、曲に独特の色気が生まれています。

  • ピアノリフがすぐ耳に残る
  • リズムが跳ねていてノリやすい
  • 歌詞は恋愛の消耗感を描いている
  • ボーカルは甘く、少し皮肉っぽく響く

この組み合わせがあるから、何年経ってもイントロだけで「あ、この曲だ」と分かる強さがあります。

MVで印象に残る、親密さとバンド演奏のコントラスト

「This Love」のMVは、Sophie Mullerが監督した作品として知られています。

映像では、Adam Levineの親密なシーンと、バンドが演奏する場面が交互に描かれます。恋愛の熱っぽさを前面に出しながらも、バンドとしての演奏感を失っていないため、単なるラブソングの映像ではなく、初期マルーン5のキャラクターを強く印象づけています。

このMVで大事なのは、恋愛を美しく理想化していないところです。甘さはあるけれど、どこか落ち着かない。近い距離にいるのに、関係が安定しているようには見えない。

その不安定さが、歌詞にある「続いているのに壊れている恋」と自然につながっています。映像のセクシーさは話題になりやすい部分ですが、曲のテーマと合わせて見ると、親密さそのものが少し危ういものとして映っているのが見どころです。

初期マルーン5らしさが一番わかる曲

今のMaroon 5は、よりポップで洗練されたヒット曲のイメージも強いですが、「This Love」には初期ならではのバンド感があります。

演奏はタイトで、リズムにはファンクの粘りがあり、ボーカルは甘いのに少し鋭い。きれいに整えられたポップソングでありながら、どこか生々しさが残っています。

この生々しさは、『Songs About Jane』期のマルーン5を語るうえでかなり重要です。恋愛のきれいな部分だけではなく、嫉妬、未練、欲望、疲れまでポップに変換してしまう。その手つきが、この時期の彼らの強さでした。

「She Will Be Loved」が切なさを広げる曲だとすれば、「This Love」はもっと鋭く、リズムで感情を押し出す曲です。マルーン5を初めて聴く人にも、バンドの入口としてかなり分かりやすい1曲だと思います。

今聴き返しても古びにくい理由

「This Love」が今も聴き返されるのは、サウンドが単純な流行だけに寄っていないからです。

ピアノ、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの役割がはっきりしていて、曲全体がコンパクトにまとまっています。派手な仕掛けに頼らなくても、リフとメロディだけで記憶に残る。これは強いです。

そして、歌詞のテーマも古びにくいものです。終わったほうがいいと分かっているのに、簡単には離れられない恋。相手を責めたいのに、まだ惹かれている気持ちも残っている。そういう矛盾は、時代が変わっても多くの人に伝わります。

「This Love」は、明るく聴けるのに、よく聴くと苦い曲です。
その軽さと痛みのバランスをMVと一緒に味わうと、マルーン5がなぜこの曲で一気に存在感を高めたのかが、かなり分かりやすく見えてきます。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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