宇宙へ送られた「Higher Power」|コールドプレイMVで描く孤独と高揚

宇宙ステーションへ向けて初めて鳴らされた、という始まり方からして「Higher Power」はかなりColdplayらしい曲です。
コールドプレイが2021年に発表したこの曲は、Max Martinによる明るいシンセポップの輪郭と、SF的なMV演出が重なった「Music of the Spheres」期の入口と言えます。
タイトルの“Higher Power”は、直訳の「高次の力」だけでなく、自分を外へ連れ出してくれる存在や衝動としても受け取れます。

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宇宙へ送られた始まりが、この曲の入口になっている

「Higher Power」は、リリース時にフランス人ESA宇宙飛行士トマ・ペスケとの国際宇宙ステーション連動企画で披露されました。特別に収録されたパフォーマンス映像がISSへ送られ、宇宙にいるペスケが楽曲を初めて再生するという演出です。

この打ち出し方は、単なる話題作りというより、曲そのものの方向性とよく合っています。サウンドは地上の小さな悩みを一気に上へ持ち上げるように明るく、MVも地球ではない場所へ視点を移すことで、現実の孤独を少し離れた場所から見せています。

Coldplayはもともと大きなスケールの感情を描くのが得意なバンドですが、この曲ではそのスケールが「空」ではなく「宇宙」まで広がっているのが特徴です。

“Higher Power”は、恋愛にも救いにも読める言葉

タイトルの“Higher Power”は、宗教的な意味での大きな力を連想させる言葉でもあります。ただし、この曲では特定の信仰を説明するというより、語り手を暗い場所から引き上げる存在として響きます。

歌詞では、落ち込みや孤立の感覚がありながら、それでも相手の存在によって体が動き出すような流れがあります。ここでの“power”は、理屈で自分を励ます力ではなく、音が鳴った瞬間に足が前へ出るようなエネルギーに近いものとして受け取れます。

サビで声とリズムが開けるため、言葉の意味より先に「上へ持ち上がる感じ」が伝わってきます。音の作りに注目すると、この曲は希望を説明するより、希望が身体に入ってくる瞬間をポップソングとして形にしています。

Max Martinの明るさが、Coldplayをよりポップに押し出す

「Higher Power」は、ポップ界を代表するプロデューサーのMax Martinが制作に関わった曲です。Coldplayらしい広がりのあるメロディに、シンセの反復と弾むビートが加わることで、ロックバンドの曲というより、最初から大きな会場で光ることを想定したポップソングとして鳴っています。

冒頭からリズムが前に出て、サビでは声とシンセが一気に視界を明るくします。ギターやバンド感を全面に押し出すというより、音の配置を整理して、メロディの上昇感をまっすぐ届かせる作りです。

そのため、初期Coldplayの内省的な手触りを求めるとかなり違って聴こえるかもしれません。ただ、「A Sky Full of Stars」以降の大きな会場向けのColdplayを好きな人には、この曲の開き方はかなり入りやすいはずです。

MVは、異星の街で孤独が踊り出す映像

公式MVは、Dave Meyersが監督を務めたSF色の強い映像です。舞台は架空の惑星Kaotica。ロボット犬、踊るエイリアン、巨大なホログラムのような表現が登場し、現実の街ではなく、少しずれた異星の空間として描かれています。

このMVで面白いのは、未来的な画面なのに、中心にある感情はとても人間的なところです。Chris Martinが異世界を歩く姿は、孤立した人物が自分の居場所を探しているようにも見えます。そこにダンスが入ることで、孤独な移動が少しずつ祝祭へ変わっていきます。

監督のDave Meyersは、この映像について、いま自分たちが世界から遠く離れ、まるで異星にいるように感じる感覚のメタファーだと説明しています。つまり、このMVのSF表現は派手な装飾ではなく、現実の疎外感を遠回りに見せるための仕掛けとして機能しています。

SeoulのAmbiguous Dance Companyが作る、奇妙で楽しい動き

MVには、韓国・ソウルのAmbiguous Dance Companyも登場します。彼らのダンスは、いわゆる整ったバックダンサーの動きというより、少しコミカルで、奇妙で、でも目で追ってしまうリズムを持っています。

この動きがあることで、MVは単なる近未来映像では終わりません。異星の住人たちが踊る姿は、最初は不思議に見えても、曲が進むにつれて「ここにも生活がある」と感じさせます。孤独に見えた場所が、実は音でつながれる場所だったと分かる流れです。

情報量の多いSF映像の中で、いちばん人間らしく見えるのが人間ではないようなダンス、という逆転がこのMVの強さです。

「Music of the Spheres」期のColdplayを知る入口

「Higher Power」は、Coldplayの中でも特に明るく、外へ開いた曲です。深く沈むバラードではなく、孤独を抱えたままでも光の方向へ走り出すタイプの楽曲と言えます。

「Fix You」や「Yellow」のような静かな感情の近さとは違い、この曲では大きな音、宇宙的なコンセプト、鮮やかな映像によって、感情を遠くまで飛ばしています。だからこそ、繊細さよりも高揚感を求めて聴くと、この曲の良さが分かりやすくなります。

今あらためて聴くと、「Higher Power」はColdplayが自分たちのスケールをさらに拡張しようとした時期の、かなり分かりやすい合図のように響きます。宇宙へ向けた演出も、SFのMVも、最終的には「ひとりでは上がれない場所へ、誰かが連れていってくれる」というシンプルな感情に戻ってくる曲です。

Coldplayの代表曲を続けて聴くなら、以下のまとめも参考にしてください。

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