世界的ポップバンドのマルーン5(Maroon 5)が、BLACKPINKのメンバーでありグローバルアイコンとして躍進を続けるリサ(LISA)を客エンに迎えた楽曲「Priceless」。本作は、彼らの豊かなキャリアの中でも「原点回帰」と呼ぶにふさわしい、深い情緒とオーガニックな手触りを持ったミディアムナンバーです。この記事では、長年洋楽を追い続けてきた記者の視点を交えながら、このコラボレーションがもたらした音楽的な意味や、MV・歌詞が描く“本当の価値”について深く解き明かしていきます。
| 曲名 | Priceless (featuring LISA) |
| アーティスト | Maroon 5, LISA |
| リリース日 | 2025年2月5日 |
| 収録アルバム | Love Is Like (2025) |
| 主な実績 | 世界的な配信チャートで上位を記録、バンド初の本格的なK-POPトップスターとのコラボレーション |
「Priceless」の意味:アダムとリサが歌う“金で買えない価値”
タイトルの「Priceless」とは、単に「価格がつけられない」という意味ではなく、「お金では決して手に入らない、何よりも大切なもの」を象徴しています。2010年代のマルーン5といえば、マックス・マーティンやベニー・ブランコといった稀代のヒットメーカーたちと組み、緻密に計算されたエレクトロ・ポップでチャートを席巻してきた印象が強いかもしれません。
しかし、この楽曲の最大の聴きどころは、そうした装飾をあえて削ぎ落とした「引き算の美学」にあります。
アダム・レヴィーンのエモーショナルなハイトーンボイスが、アコースティックな温かみを残すR&B/ソウルのビートに乗せて紡ぎ出すのは、富や名声の先にある「感情の真実」です。そこに重なるリサのパートは、ただのトレンド感の追加ではなく、楽曲にビロードのような滑らかさと気品ある締まりを与えています。
約30年、洋楽のブームの変遷をリアルタイムで追ってきた耳には、このミニマルで地に足のついたサウンドアプローチに、2000年代初頭の彼らの記念すべきデビューアルバム『Songs About Jane』の頃に漂っていた、バンド本来の瑞々しい生演奏のグルーヴ感が重なって聞こえてきます。ヒットチャートの狂騒を経て、今この成熟した引き算の音に行き着いたことに、深い感慨を抱かずにはいられません。
視覚で魅せるストーリー:ジャスティン・ムーン監督が切り取ったエモーション
MVのメガホンを取ったのは、現代のビジュアルシーンでエッジの効いた映像美に定評のあるジャスティン・ムーン(Justin Moon)。プロダクションは次世代のクリエイティブ集団「°1824」が手掛けています。
映像のトーンは、きらびやかなハリウッド的ゴージャスさとは一線を画す、フィルムライクで陰影の深いスタイリッシュな質感で統一されています。
- 光と影のコントラスト: 華やかなステージの裏側や、静寂が包む都会の夜をモチーフに、アーティストたちの「個」の孤独と気高さを浮き彫りにするカメラワーク。
- リサがもたらす圧倒的な「動」と「静」: 彼女のパートでは、ただ激しく踊るのではなく、指先の動き一つ、視線の配り方一つで空間を支配するような、気品に満ちた佇まいが印象的です。
洋楽のミュージックビデオを見続けていると、ポップスター同士のコラボ映像はどうしてもお互いの存在感をぶつけ合う派手な構成になりがちですが、本作は違います。お互いのクリエイティビティをリスペクトし、一つのキャンバスに調和させていくような、大人の余裕とエレガンスが画面から溢れています。何年経って見返しても色褪せない、時代の空気を美しく閉じ込めたタイムレスな映像作品と言えるでしょう。
歌詞の深層:スラング「Priceless」のニュアンスと現代のリアル
歌詞の引用は最小限に留めますが、サビで繰り返される「Priceless」というワードの響きには、現代社会への洗練された風刺と、純粋な愛への賛歌が内包されています。
日常の英語スラングとしての「Priceless」は、「最高に面白い」「傑作だ」という意味で使われることも多いですが、この曲の文脈では原義である「かけがえのないもの」に強く引き戻されています。全てがデータ化され、価格やフォロワー数、再生回数といった「数値」で測られがちな今のデジタル時代において、アダムとリサは「目に見えない、数値化できない関係性こそが本物だ」と静かに語りかけているのです。
リサが担当するラップパートでは、流れるような英語のデリバリーの中に、強さと柔らかさが同居した比喩表現が散りばめられており、単なる客演の枠を超えて、曲のメッセージをより多角的なものへと昇華させています。
今夜、この曲をもう一度深く味わうために
初めてこの曲を聴いたときには、耳馴染みの良いモダンなポップソングとしてスッと流れていくかもしれません。しかし、何度も耳を傾けるうちに、ベースラインの暖かみや、アダムのボーカルの背後でそっと鳴るストリングス・アレンジの細やかな職人技に気づかされます。派手なトレンド曲ほど数年後に消費されて消えてしまいがちですが、この「Priceless」には、何年経ってもリスナーの心に残り続ける確かな「芯」があります。
この楽曲の余韻を最も深く味わうなら、すべての作業を終えた金曜日の深夜、部屋の明かりを少し落として、ヘッドホンでじっくりと再生するシチュエーションをおすすめします。日常の喧騒から離れた静寂の中で聴くことで、アダムの切実な歌声とリサのシルキーなフロウが、あなたの心に「本当に大切なものは何か」を優しく問いかけてくるはずです。
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