元ネタはマイケル・ジャクソン!リアーナ「Don’t Stop The Music」MV解説|あの「呪文」が2000年代クラブアンセムに化けた理由

2000年代後半のクラブシーンを席巻し、今なお色褪せない輝きを放つリアーナ(Rihanna)の『Don’t Stop The Music』。本作の最大の聴きどころは、マイケル・ジャクソンの名曲から受け継いだ大胆なサンプリングと、日常のストレスを弾き飛ばす圧倒的なダンスフロアの解放感にあります。当時の夜の熱気をリアルタイムで体感してきた耳には、このイントロの重低音が響くだけで、あの時代特有の濃密な空気感とフロアの地鳴りのような興奮が鮮烈に蘇ってきます。

曲名Don’t Stop The Music
アーティストRihanna(リアーナ)
リリース日2007年9月7日(シングルリリース)
収録アルバムGood Girl Gone Bad
主な実績全米ビルボードHot 100最高3位 / 第50回グラミー賞最優秀ダンス・レコーディング賞ノミネート
目次

マイケル・ジャクソンから受け継いだ「Mama-say」の呪文とサンプリングの背景

曲の中盤から終盤にかけて執拗に繰り返される「Mama-say mama-sa ma-ma-ko-ssa」という強烈なフレーズ。洋楽を長く聴き続けているリスナーであれば、誰もがマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の1982年の歴史的名盤『Thriller』に収録された『Wanna Be Startin’ Somethin’』の終盤のフックを思い出すはずです。

リアーナはこの歴史的ディスコ・ファンクの遺伝子を、2000年代最先端のエレクトロ・ハウスの骨組みへと見事に移植しました(大元はカメルーンのミュージシャン、マヌ・ディバンゴの『Soul Makossa』)。ノルウェーのプロデューサーチームであるスターゲイト(StarGate)による計算し尽くされた引き算のトラックメイクは、このクラシックなフレーズが持つ原始的なグルーヴを極限まで引き出しています。単なる過去の遺産の使い回しではなく、ダンスミュージックの歴史を地続きでアップデートしてみせたこの手腕には、今聴き返しても深い感慨を覚えます。

お菓子屋さんの奥に広がる秘密のクラブ!アンソニー・マンドラー監督が描くMVの世界観

ミュージックビデオ(MV)の舞台は、一見すると平凡な街のお菓子屋さん(キャンディーストア)。しかし、リアーナと友人たちが店員に目配せをし、店の奥にある「秘密の隠し扉」を抜けると、そこには熱気あふれる巨大なナイトクラブが広がっているというドラマチックな世界観が描かれています。

メガホンを取ったのは、リアーナの『Disturbia』や『Russian Roulette』なども手掛け、彼女のクールでエッジの効いたビジュアルイメージを確立した名匠アンソニー・マンドラー(Anthony Mandler)。当時、それまでの「清純なポップシンガー」から「シャープな黒髪ボブのクールな歌姫」へと完全に脱皮したリアーナの、自信に満ちあふれた眼差しと艶やかなダンスが、スモークと鮮やかなライティングの中でこれ以上ない説得力を持って捉えられています。ただ華やかなだけでなく、どこかアングラな大人の秘密基地のような雰囲気を漂わせる映像美は、流行に消費されない独自の強度を持っています。

歌詞から読み解く「日常からの脱却」とフロアがもたらす極上の解放感

歌詞のテーマは非常にシンプルで明快です。一週間のストレスや退屈な日常をすべて忘れ、ただ音楽と目の前の相手とのダンスに没頭する瞬間を歌い上げています。

I gotta get my body moving, shake the stress away

ここで使われている「shake the stress away」という表現は、直訳すると「ストレスを振り払う」ですが、ネイティブの間では日常会話やSNSでも「嫌なことや疲れをパッと忘れてリフレッシュする」という意味でよく使われるポジティブなスラング的比喩表現です。「週末だから遊びに行って疲れを吹き飛ばそう!」と言いたい時にぴったりのフレーズと言えます。

ポップソングにありがちな過剰な恋愛感情を押し出すのではなく、「DJ、音楽を止めないで」「ただこのフロアのエスケープ(逃避)を楽しみたい」とドライに歌う視点こそが、現代の自立したリスナーの共感を呼び、結果として世界的なロングヒットへと繋がりました。

今あらためてヘッドホンで聴き返したい、エレクトロハウス前夜の金字塔

2010年代に世界中を席巻することになるEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の大ブームが訪れる直前、2007年という絶妙なタイミングでリリースされたこの曲。何年も洋楽の変遷を追ってきた耳で今あらためて聴き返すと、エレクトロ特有の硬質なシンセサイザーの隙間で、リアーナの持つ少しハスキーで肉感的なボーカルの凄みが際立って聞こえてきます。現在のトレンドであるミニマルなビート感覚にも通じる洗練さがあり、当時のチャート上の大ヒットという事実以上に、2000年代ダンスポップのひとつの到達点として今もなお圧倒的な芯の強さを誇っています。

もし今夜、一週間の仕事や学校の疲れが体に溜まっているのを感じるなら、部屋の明かりを少し落とし、ヘッドホンをいつもより少し大きめのボリュームに設定してこの曲を再生してみてください。最初の4つ打ちのキックが鼓膜を叩いた瞬間、部屋の空気は一瞬にしてあの熱狂的なダンスフロアへと変貌し、最高に贅沢なエスケープの時間を味あわせてくれるはずです。

こちらのページでは、リアーナのこれまでの歩みや他の名曲についても詳しくまとめています。あわせてチェックしてみてください。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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