【元ネタ・意味】アリアナ・グランデ「7 rings」は「My Favorite Things」をどう使った?

「7 rings」の元ネタは、Rodgers & Hammersteinが手がけたミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の名曲「My Favorite Things」です。ただし、原曲の録音そのものを切り取ったサンプリングではなく、特徴的な旋律を新しく演奏・歌唱する「インターポレーション」という方法が使われています。

さらにタイトルの「7 rings」は創作ではなく、アリアナ・グランデがニューヨークのTiffany & Co.で友人たちと7個の指輪を購入した実話から生まれました。元ネタと実話を重ねて見ると、この曲が単なる「お金持ち自慢」ではなく、“自分を立て直すためのお気に入り”を2019年のアリアナ流に書き換えた曲だと見えてきます。

【「7 rings」のポイント】

  • 元ネタ: 『サウンド・オブ・ミュージック』の「My Favorite Things」
  • 使用方法: 原曲音源のサンプリングではなく、旋律を再演するインターポレーション
  • Rodgers & Hammersteinとの関係: Richard RodgersとOscar Hammerstein IIが「7 rings」の作家としてもクレジットされている
  • 7個の指輪: アリアナがTiffany & Co.で購入した7個の指輪という実話が曲名の由来
目次

7 ringsの元ネタは「My Favorite Things」

「7 rings」の元ネタは、1959年に初演されたミュージカル『The Sound of Music(サウンド・オブ・ミュージック)』の「My Favorite Things」です。

「My Favorite Things」はRichard Rodgersが作曲、Oscar Hammerstein IIが作詞した楽曲。オリジナルのブロードウェイ版ではMary MartinとPatricia Newayが歌い、1965年の映画版でJulie Andrewsが歌ったことで世界的に広く知られるようになりました。

原曲は、不安や悲しさを感じたときに、自分の好きなものを思い浮かべることで気持ちを落ち着かせる歌です。「7 rings」は、その発想そのものを残しながら、“お気に入り”の中身をまったく別のものへ入れ替えています。

どこが同じ?旋律を聴き比べるとすぐ分かる

特に分かりやすいのは、冒頭からヴァースにかけて進むメロディです。「My Favorite Things」の言葉を次々と並べていく独特の旋律が、「7 rings」でもはっきり聞こえます。

一方で伴奏は大きく違います。「My Favorite Things」が舞台音楽らしい流れを持つのに対し、「7 rings」では低く沈む808系のベースや乾いたビートが入り、旋律のかわいらしさに冷たい質感を重ねています。

つまり「似ている曲」なのではなく、元のメロディを意識的に楽曲の骨格へ取り込んでいるのが「7 rings」です。

「7 rings」はサンプリング?正確にはインターポレーション

「7 rings」は「My Favorite Thingsをサンプリングした曲」と紹介されることもありますが、音楽制作上はインターポレーションと説明する方が正確です。

一般にサンプリングは、既存のレコードや音源から実際の録音の一部を取り出し、新しい曲の中で使用する方法を指します。それに対してインターポレーションは、既存曲のメロディや歌詞などを、新しい録音として演奏・歌唱し直して取り入れる方法です。

「7 rings」で聞こえるのは、1959年や1965年の「My Favorite Things」の録音をそのまま切り取った音ではありません。アリアナ側の楽曲として旋律を再構築し、トラップ寄りのプロダクションへ置き換えています。

この違いを知ると、「7 rings」の面白さがはっきりします。古いミュージカル音源を現代のビートに貼り付けたのではなく、誰もが知る旋律そのものを2019年型のポップ/ヒップホップへ変換しているからです。

Rodgers & Hammersteinが「7 rings」の作家に入っている理由

「My Favorite Things」を書いたRichard RodgersとOscar Hammerstein IIは、「7 rings」のソングライターとしてもクレジットされています。

つまり「なんとなく似ている」というレベルの影響ではありません。「My Favorite Things」の楽曲そのものを利用する前提で権利処理が行われた作品です。

さらに「7 rings」のリリース後には、Rodgers & Hammerstein側へ作詞作曲印税の90%が配分される契約だったと報じられました。新曲の作家クレジットにはAriana GrandeやVictoria Monét、Tayla Parxら複数の現代のソングライターが並びますが、それほど大きな割合が元ネタ側へ割り当てられたことになります。

この数字からも、「My Favorite Things」が単なる小さな引用ではなく、「7 rings」の中心部分を形作っていることが分かります。

「お気に入り」をダイヤモンドと買い物へ反転させた

元ネタを知ったうえで重要なのは、「7 rings」が「My Favorite Things」のメロディだけを借りているわけではないことです。実は、歌の考え方まで利用しながら、その内容を大胆に反転させています。

「My Favorite Things」では、つらいときに好きなものを思い出すことで気持ちを落ち着かせます。「7 rings」でも出発点はよく似ています。しかしアリアナが並べる“お気に入り”は、ダイヤモンドや高価な買い物、自分で稼いだお金で手に入れられるものへ変わりました。

【重要フレーズの和訳】
原詞:I want it, I got it
日本語訳:欲しいと思った、だから手に入れた
ニュアンス:「欲しい」で終わらず、すぐ「持っている」へ移ることで、自分の欲望を自分の力で満たせる立場を強調しています。

この短いフレーズこそ、「My Favorite Things」と「7 rings」の距離を象徴しています。好きなものを“思い浮かべる”原曲に対して、「7 rings」では欲しいものを“所有する”ところまで進むからです。

そのため同じ旋律なのに、受ける印象はほとんど逆になります。柔らかな思い出の歌だったメロディが、アリアナの声に乗ると、自信と財力を見せつけるフックへ変わる。その落差が「7 rings」の強い引力になっています。

7個の指輪を買ったのは実話だった

タイトルになった「7 rings」も、元ネタとは別に実際の出来事から生まれています。

アリアナは2018年、ニューヨークでつらい一日を過ごした際、友人たちとTiffany & Co.へ向かいました。本人が当時説明したところでは、そこでシャンパンを飲みながら過ごすうちに7個の婚約指輪を購入し、スタジオへ戻ったあと友人たちへ友情のリングとして渡したことが曲の着想につながりました。

ここで面白いのが、本来は恋愛や結婚を強く連想させる「婚約指輪」が、友人との結びつきを示すものへ変えられていることです。

「7 rings」が作られたのは、アリアナがPete Davidsonとの婚約解消を経験した時期でもあります。誰かから贈られる指輪ではなく、自分自身のお金で指輪を買い、それを大切な友人たちと共有する。曲名そのものに、恋愛に結びついていた象徴を自分の手へ取り戻す動きがあります。

だから「7」という数字にも意味があります。単に語呂のいい数字を選んだわけではなく、その日の買い物で実際に生まれた7個のリングが、そのまま曲のタイトルになりました。

ミュージカルの旋律にトラップの低音を重ねる理由

「My Favorite Things」を知っているほど、「7 rings」のサウンドには奇妙な違和感があります。耳になじんだ柔らかなメロディの下で、低いベースと硬いビートが鳴り続けるからです。

アリアナの歌い方も、得意とする大きなロングトーンを前面に出すタイプではありません。前半では旋律を軽くなぞり、後半になるほど言葉を細かく刻むラップ寄りのフロウへ移っていきます。

ここでも元ネタとの対比が効いています。「My Favorite Things」の旋律は安心感を与えるのに、その下では現代的なトラップの低音が鳴る。懐かしいものと攻撃的なものが同時に存在することで、「かわいい」だけにも「強い」だけにもならない音になっています。

元ネタを知らずに聴けば、印象的なメロディを持つトラップポップとして楽しめます。しかし「My Favorite Things」を知ってから戻ると、この曲は過去の名曲を引用したというより、そこにあった“自分を元気にする方法”を別の時代の価値観へ書き換えた作品として聞こえてきます。

ピンクの豪邸で「7個の指輪」の実話を映像にする

Hannah Lux Davisが監督したMVでは、ピンクや紫の光に包まれた豪邸で、アリアナと友人たちがパーティーを楽しみます。曲のきっかけになった友人たちも登場するため、7個の指輪のエピソードが映像の中にもつながっています。

宝石、シャンパン、豪華な衣装、極端に長いポニーテールなど、画面には“欲しいものを好きなだけ手に入れる”イメージが次々と現れます。しかしアリアナ一人だけを成功者として見せる映像ではなく、友人たちとその空間を共有しているのがポイントです。

「My Favorite Things」が好きなものを思い浮かべて心を立て直す歌だとすれば、「7 rings」のMVは、それを実際に買い、身につけ、友人と分け合うところまで視覚化したものとも読めます。

「7 rings」の元ネタを知ると、冒頭のメロディは単なる懐メロ引用には聞こえなくなります。「My Favorite Things」が持っていた“つらいとき、自分の好きなものへ意識を向ける”という発想を残しながら、その答えだけを友情、買い物、成功、自分で選ぶ自由へ入れ替えているからです。

アリアナ・グランデの他の代表曲と並べると、「7 rings」でラップやトラップへ大きく寄せた音楽性と、この時期ならではの強気な表現がさらに分かりやすくなります。

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