【和訳・意味】マイリー・サイラス「Prisoner」デュア・リパと歌う“感情の囚人”とは?

「Prisoner」は直訳すると「囚人」ですが、マイリー・サイラスとデュア・リパが歌っているのは、牢屋に閉じ込められた人物ではありません。別れたいのに相手が頭から離れず、自分自身の感情から逃げられない状態を“囚人”に重ねた曲です。

2020年のアルバム『Plastic Hearts』に収録された「Prisoner」は、失恋の苦しさを沈んだバラードにせず、ロックと80年代ディスコが混ざる強いビートへ変えているのが特徴です。

【3秒でわかる「Prisoner」のポイント】

  • “Prisoner”の意味: 恋人そのものより、消せない記憶や感情に捕らわれた「囚人」を表している
  • 歌詞の核心: 関係から離れたいのに、何度試しても相手を忘れられない矛盾
  • 80年代との接点: Olivia Newton-John「Physical」を思わせるメロディが組み込まれている
  • MVの仕掛け: “閉じ込められる”歌なのに、2人はツアーバスで走り続け、最後には元恋人たちへ挑発的なメッセージを残す
目次

「Prisoner」は誰の囚人? 相手よりも自分の感情から逃げられない

英語の“prisoner”は「囚人」「捕らわれている人」を意味します。この曲では、恋人によって物理的に拘束されているのではなく、終わらせたい関係への執着から抜け出せない心理状態を表す言葉として使われています。

歌詞の語り手は、相手を忘れようと何度も試します。それでも記憶は頭から消えず、「もう離れたい」という意思と「まだ離れられない」という感情が同時に存在しています。

ここで面白いのは、“相手が自分を閉じ込めている”だけではないことです。扉を開けたいと思っている本人の中にも執着が残っているため、牢屋そのものが自分の感情の中にあるように聞こえます。

Miley Cyrusはリリース当時、この曲について、外へ逃げ場が少なかった2020年の状況とも重なると説明しています。普段なら押し込めておける感情も、立ち止まった瞬間に表へ出てくる。「Prisoner」は恋愛の曲でありながら、“自分の感情から逃げられない感覚”まで広げて聴ける曲です。

離れたいのに忘れられない――歌詞は同じ場所を何度も回る

「Prisoner」の歌詞には、きれいな別れや前向きな決着がありません。相手との関係を終わらせたい気持ちははっきりしているのに、思考だけが何度も相手へ戻ってしまいます。

そのため、物語が「未練から立ち直る」という一直線の流れになっていないのが重要です。忘れようとする、思い出す、逃げようとする、また捕らわれる。その循環自体がタイトルの“Prisoner”を表しています。

MileyとDuaが交互に声を重ねることで、この感情は一人だけの告白にも聞こえなくなります。タイプの異なる2人の声が同じフレーズへ集まっていくため、「分かっているのに抜けられない」という恋愛の厄介さが、より普遍的なものとして浮かびます。

Olivia Newton-John「Physical」とつながる80年代ポップの記憶

「Prisoner」を聴いてどこか懐かしいと感じる理由のひとつが、Olivia Newton-Johnが1981年に発表した「Physical」を思わせるメロディです。「Prisoner」では元音源をそのまま切り取って使うサンプリングというより、既存曲の旋律を新たな演奏の中へ組み込むインターポレーションとして知られています。

ただし、2曲が描く感情はかなり違います。「Physical」は身体的な欲望を大胆にポップへ変えた曲でしたが、「Prisoner」で中心になるのは、身体よりも頭の中から離れてくれない相手です。

同じ80年代的な高揚感を持つメロディが、約40年後には“自由になれない感情”へ置き換わる。このねじれによって、「Prisoner」は懐かしいだけのレトロポップではなく、明るく動く音ほど歌詞の閉塞感が際立つ曲になっています。

ツアーバスは走り続ける――MVは「囚人」を牢屋で描かない

MVには、タイトルから想像しやすい牢獄や鉄格子がほとんど必要とされません。Miley CyrusとDua Lipaはツアーバスで移動し、車内で身体を寄せ合い、チェリーを食べ、やがて荒々しいライブ空間へ飛び込んでいきます。

特に目を引くのが、口元や身体につく血を思わせる赤色です。チェリーの鮮やかな赤とも重なり、甘さと危険さが区別しにくくなっていきます。恋愛への欲望と傷ついた感情が同じ色で混ざっているようにも読める演出です。

そして「閉じ込められている」と歌っているにもかかわらず、映像の2人は止まりません。車は走り、身体は踊り、画面のテンポも前へ進み続けます。

ここに「Prisoner」の面白い反転があります。歌詞では過去から逃げられないのに、映像では逃げるように走り続けている。その移動が本当に解放なのか、それとも忘れるための暴走なのかは明示されません。

MV終盤には、元恋人たちへ向けたかなり挑発的な献辞も登場します。傷ついた人物を静かに描くのではなく、失恋そのものを騒がしいパーティーへ変えてしまうことで、“囚人”だった側が主導権を取り戻していくようにも見えます。

MileyのざらつきとDuaの低音が、ロックとディスコを接続する

音の中心にあるのは、脈打つベース、硬く前へ出るドラム、ギター、そして80年代を思わせるシンセの質感です。Andrew Wattがギター、ベース、ドラムなどを担い、The Monsters & Strangerzとともにプロデュースしたサウンドは、ダンスできるテンポを保ちながら表面にはロックのざらつきを残しています。

そこへMiley Cyrusのハスキーで少し擦れた声が乗ると、『Plastic Hearts』期のロック色が強く出ます。一方のDua Lipaは、低く滑らかな声で同じグルーヴへ入るため、彼女が『Future Nostalgia』で磨いていたディスコポップの感触も自然に持ち込まれます。

つまり「Prisoner」は、2人が同じ歌い方をするコラボではありません。声の質感が違ったまま同じ感情を歌うことで、MileyのロックとDuaのディスコがぶつからずに共存しています。

歌詞だけなら息苦しい“抜け出せない恋”が、サウンドでは身体を動かしたくなる曲になる。この矛盾こそが「Prisoner」の芯です。

「Prisoner」からマイリー・サイラスの変化をさらに追うなら、初期のティーンポップから『Plastic Hearts』期、そして「Flowers」以降までをまとめたページで、声と音楽性の変化を続けて見ることができます。

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一方、Dua Lipa側から聴くと、「Prisoner」のディスコ感が『Future Nostalgia』期の流れとどうつながっていたのかが分かりやすくなります。

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「Prisoner」という言葉だけを見ると身動きの取れない曲ですが、実際の音とMVは猛烈に前へ進み続けます。逃げたいのに感情だけが残ってしまう――その“心は止まっているのに身体は動いている”感覚を意識すると、ダンスできるサビの奥にある苦しさがより鮮明に聞こえてきます。

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