「Havana」は、キューバの首都ハバナを、故郷への想いと忘れられない恋の記憶に重ねた曲です。
MVはテレノベラ風の短編として始まり、カミラ・カベロが“物語を見る側”から“自分の物語を書く側”へ動き出す流れを描いています。
軽やかなラテンポップに聴こえるのに、心だけがどこかに置き去りにされたような感触が残る一曲です。
「Havana」の意味は、場所よりも“戻りたくなる感覚”にある
曲名の「Havana」は、キューバの首都ハバナを指します。
ただ、この曲で歌われるハバナは、観光地としての地名というより、語り手の心がまだ残っている場所として響きます。恋の相手との記憶、故郷への引力、自分のルーツに近い場所。そのいくつかが重なって、「Havana」という一語に集まっているように受け取れます。
歌詞では、心の一部がハバナに残っているという感覚と、恋の相手が別の街のイメージを連れてくる構図が並びます。だからこの曲は、単に「彼が忘れられない」というラブソングではなく、恋をきっかけに自分の出発点まで思い出してしまう曲としても読めます。
テレノベラ風MVが、曲の物語性を一段前へ出す
MVは、カミラが部屋でドラマを見ている場面から始まります。そこから祖母に促され、外へ出て映画館へ向かい、劇中映画の中で別の自分と出会うような構成になっています。
このMVで面白いのは、カミラがひとつの役だけを演じていないことです。家にいる控えめなKarla、ドラマの中の人物、映画の中で赤い衣装をまとって踊る主人公。複数の顔が切り替わることで、「Havana」はただの恋の回想ではなく、自分がどんな物語を選ぶのかという話に広がっていきます。
特に、画面の中のカミラが現実のカミラに語りかけるような展開は、曲の明るさにもう一段の意味を足しています。誰かに恋をする曲でありながら、最後には自分の人生を外へ動かしていく曲にも見えるのです。
ラテンの揺れと低く刻むビートが、甘さを軽くしすぎない
サウンドは、短く反復するピアノのフレーズと、身体を横に揺らすようなリズムが中心です。派手に盛り上げるというより、同じフレーズを何度も引き寄せながら、声とビートで中毒性を作っています。
ラテンポップらしい軽やかさはありますが、低音がしっかり残るため、ただ明るいだけの曲にはなっていません。サビで声が前に出るたびに、ハバナという言葉が地名ではなく、頭の中で何度も戻ってくる記憶のように響きます。
この曲の強さは、リズムの気持ちよさで入口を作りながら、歌詞の中心には「まだ離れられない場所」を置いているところです。踊れるのに、心だけが少し後ろを振り返っている。そのズレが「Havana」を一度聴くと忘れにくい曲にしています。
Young Thugの客演が、恋の行き先を一色にしない
Young Thugのラップは、曲に別の温度を持ち込みます。
カミラの歌声がハバナへの引力を描くのに対して、Young Thugのパートはより現実の街や距離感を感じさせます。そのため、曲全体が「ラテン風のロマンチックなポップ」で完結せず、恋の相手が別の文化や場所を連れてくるような広がりを持ちます。
この対比があるから、曲の中の恋はきれいな思い出だけになりません。甘さ、距離、違う街の匂いが混ざり、語り手の心がどこにあるのか少し揺れて見える。そこに、ポップソングとしての軽さ以上の引っかかりがあります。
ソロ初期のカミラを決定づけた、ルーツの出し方
「Havana」は、カミラ・カベロのソロアーティストとしてのイメージを強く決定づけた曲です。
Fifth Harmony後のカミラにとって、この曲は単にヒットしたシングルというだけではありません。英語圏のポップの中に、キューバ系ルーツを感じさせる言葉、リズム、映像のムードを入れ、自分の名前と結びつく場所をポップの中心に置いた曲でもあります。
海外レビューでも、この曲はラテン音楽の流れやキューバ系の背景と結びつけて語られることがあります。実際、サウンドの軽やかさだけでなく、カミラの演劇的な表情やMVの過剰なドラマ性まで含めて、「Havana」は彼女の個性を一気に伝える作品になっています。
明るい曲の奥にある、物語を選び直す感覚
「Havana」は、サビだけを聴けばすぐに口ずさめるポップソングです。けれどMVまで見ると、そこにはもう少し複雑な流れがあります。
部屋で物語を見ているだけだった主人公が、外へ出て、自分の物語を選び直していく。そう考えると、この曲の明るさは単なる開放感ではなく、閉じていた場所から一歩出るためのリズムにも聞こえます。
カミラ・カベロの他の代表曲と聴き比べると、「Havana」で見えるラテンポップの軽やかさや物語性が、その後の楽曲でどう変化していくかも分かりやすくなります。

