「Flux」の意味は?エリー・ゴールディングMVで描く“結ばれなかった恋”

「Flux」は、状況や感情が絶えず変化し、まだ定まっていない状態を指す言葉です。
エリー・ゴールディングはこの曲を、結ばれそうで結ばれなかった相手との「もし続いていたら」を考えてしまう気持ちとして説明しています。
白黒のMVでは、ピアノ、広い空間、降り注ぐ雨だけに要素を絞り、消えきらない未練を身体と表情で見せています。

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「Flux」が表すのは、愛ではなく揺れ続ける状態

英語の「in a state of flux」は、物事が変化の途中にあり、行き先が定まっていない状態を表します。

この曲で揺れているのは、二人の関係そのものではありません。関係はすでに過去になっている一方で、語り手の中では「あの人を愛していた可能性」がまだ終わっていません。

相手本人を取り戻したいというより、その人と生きていたかもしれない未来を手放せずにいる。「Flux」という題名は、恋の強さではなく、過去と現在の間で定まらない心の状態を指していると受け取れます。

“結ばれなかった相手”だから、答えが出ない

エリー・ゴールディングは、この曲について「もう少しで一緒になっていたかもしれない相手」を考える歌だと説明しています。

はっきり交際して、はっきり別れた関係なら、失敗した理由や終わった瞬間を振り返ることができます。しかし、実現しなかった関係には、決定的な結末がありません。

歌詞の語り手は、二人が一緒にいたら幸せになれたのか、それとも互いに嘘をつく関係になっていたのかを問いかけます。幸福だった可能性だけでなく、うまくいかなかった可能性も見ているため、単純に過去を美化する歌にはなっていません。

答えが出ないからこそ、気持ちだけが変化の途中に残されています。

ピアノとストリングスが、言葉の逃げ場をなくす

サウンドはピアノを中心に組み立てられ、エリー・ゴールディングの声が近い位置に置かれています。

強いビートや派手な電子音で感情を押し上げるのではなく、リズムを抑えた伴奏の中で、声の震えや息遣いが聞こえる作りです。やがてストリングスが加わり、心の中だけにあった問いが少しずつ広がっていきます。

それでも、サビで突然すべてが解放されるわけではありません。音が大きくなっても迷いは解決せず、同じ問いの周囲を回り続けます。

派手さを削ったからこそ、未練は感情的な演出ではなく、逃げ場のない声として残ります。

白黒の広間と雨――MVは感情を説明しない

MVを監督・振付したのはRianne Whiteです。映像は全編白黒で構成され、エリー・ゴールディングが広い空間でピアノを弾き、音に合わせて一人で身体を動かします。

広い部屋に置かれているものは少なく、画面の中心には表情と動きだけが残ります。誰かとの思い出を再現する場面や、恋愛相手を登場させる演出はありません。

監督は、女性が自分の感情を引き受ける強さと、複雑な感情を動きや象徴で表すことを映像の軸として説明しています。そのため、エリーは失恋に打ちのめされるだけの人物ではなく、迷いを抱えたまま立ち続ける人物として映ります。

後半で降り始める雨も、過去を洗い流してくれるようには見えません。最後まで降り続けることで、雨は浄化ではなく、まだ終わっていない状態そのものを示しているようにも受け取れます。

『Brightest Blue』で見える、弱さを隠さない転換

「Flux」は2019年にシングルとして発表され、翌年の4作目のアルバム『Brightest Blue』に収録されました。

同作の前半は、複雑な人間関係や成長の過程で生まれる弱さを扱った楽曲で構成されています。「Flux」はその中でも、過去の恋を断ち切るのでも、取り戻そうとするのでもなく、答えが出ない時間をそのまま残した曲です。

エリー・ゴールディングの大きなポップサウンドを知っているほど、ピアノと声だけに近づいたこの曲の静けさが際立ちます。歌唱力を見せるためのバラードではなく、言葉にした瞬間にも形を変えてしまう気持ちを記録した一曲です。

「Flux」で見える静かな内省と、「Lights」「Burn」「Love Me Like You Do」などで聴けるポップの広がりを比べると、エリー・ゴールディングの表現の振れ幅がより分かります。

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