KESHAの「High Road」でいう“high road”は、単純な「高い道」ではなく、嫌な相手と同じレベルで争わず、より良識ある態度を選ぶことを意味する英語表現です。ただしKESHAはそこに「ハイになる」という別の意味を重ね、説教臭い言葉を彼女らしいユーモアへひっくり返しています。
2020年のアルバム『High Road』の表題曲であるこの曲は、他人の悪意や批判に振り回されるのではなく、笑って自分の人生を続けるという姿勢を、ラップと弾むポップサウンドで描いています。
【「High Road」のポイント】
- タイトルの意味・何語: 英語の「take the high road」は、相手が失礼でも同じレベルでやり返さず、より良識ある態度を取るという意味。ただし曲では「high=ハイになる」という意味も重ねています
- MV・楽曲の背景: 2020年の4thアルバム『High Road』の表題曲。公式MVはアルバム発売直後の2020年2月3日に公開されました
- 歌詞のメッセージ: 悪口や否定的な声に時間を奪われず、笑い飛ばして自分の人生を楽しむという開き直りと解放感が中心です
「High Road」の意味は?“正しい道”と「ハイ」を重ねたタイトル
英語の「take the high road」は、相手が攻撃的でも同じように攻撃し返さず、より道徳的・良識的な行動を選ぶことを表すイディオムです。
普通に考えれば、「私は大人の対応をする」「くだらない争いには参加しない」といった、かなり真面目な言葉です。
ところがKESHAは、この“high”を「ドラッグなどでハイになる」という意味にも接続します。本人も『High Road』について、以前なら否定的な言葉に深く傷ついていたものの、今はそれに捕まらず笑って自分の人生を生きる、という趣旨をインタビューで説明しています。
つまりタイトルは、「品行方正になる」という宣言ではありません。
他人の悪意に付き合わないこと自体が、自分なりの“high road”なのだという発想です。この少しふざけた反転が、曲の核になっています。
「私はHigh Roadを行く」歌詞が表すのは無視する強さ
歌詞でKESHAが向き合っているのは、彼女に向けて好き勝手なことを言う人たちです。
しかし、その言葉に一つずつ反論したり、自分の価値を証明したりはしません。相手が何を言おうと、自分は眠れなくなるほど悩まない。その態度そのものが、この曲における「high road」です。
【サビ・重要フレーズの和訳】
原詞:I’m taking the high road, I’m high as fuck
日本語訳:私は“ハイ・ロード”を行く、そして最高にハイになってる
ニュアンス:「品位ある道を選ぶ」という慣用表現と「ハイになる」をわざと重ねた言葉遊び。模範的に振る舞うというより、嫌な声をまともに相手にしないKESHA流の対処法を表しています。
ここがおもしろいところで、KESHAは「批判を乗り越えて立派な人間になった」とは歌いません。
この曲で彼女が選ぶ“高い道”は、聖人になるための道ではなく、他人の悪意を自分の睡眠時間より重要だと思わないための道です。
『Rainbow』の次にKESHAが選んだのは、再び「楽しむ」こと
「High Road」を理解するうえで重要なのが、前作『Rainbow』との違いです。
2017年の『Rainbow』は、KESHAにとって非常に重い時期を反映した作品でした。「Praying」に代表されるように、傷や回復、自分自身を取り戻す過程が強く表れています。
その次に制作された『High Road』について、KESHAは当時のインタビューで、前作が非常に強烈でセラピー的な内容だった一方、今度は幸せへ向かいたかったという趣旨を語っています。
だから「High Road」は、『Rainbow』で描いた苦しみを否定する曲ではありません。
むしろ、苦しみについて語ることだけがKESHAのすべてではないと示す曲です。真剣に傷と向き合ったあとだからこそ、くだらないことを笑い飛ばして遊ぶ自由も取り戻していい。その切り替えが、この曲にはあります。
『High Road』というアルバム全体も、初期KESHAを思わせるパーティーポップと、より内省的な楽曲を同じ作品の中に共存させています。
ラップとポップを行き来するサウンドも「開き直り」を表現
「High Road」は、重々しく自分の強さを証明するタイプのアンセムではありません。
跳ねるビートの上でKESHAが言葉を畳みかけ、ラップに近いパートから唱えるようなフックへ移っていきます。相手を真正面から論破するのではなく、「まだそんなこと言ってるの?」と笑いながら通り過ぎるような軽さがあります。
公式クレジットでは、KESHAに加えてJeff Bhasker、Stephen Wrabel、Nate Ruessがソングライターとして参加。Jeff Bhaskerがプロデュースを担当し、Skylar Monesも追加プロダクションに参加しています。
とくにサビは、“high road”という本来まじめな英語表現を何度も口にしながら、その直後に品行方正さを壊す言葉を置く構造になっています。
言葉とサウンドの両方で、「もう他人が期待する正しいKESHAにはならない」と聞こえるのがポイントです。
MVのサイケデリックな映像は「まともに相手をしない」精神そのもの
2020年2月3日に公開された公式MVは、Magic Seed Productionsが手がけた映像作品です。
グラフィティに覆われた廃墟のような場所やカラフルな砂丘、動物、パーティー空間などが次々と現れ、一本の現実的な物語を追うというより、KESHAの頭の中へそのまま入り込んだようなサイケデリックな映像が続きます。
VHSを思わせる粗さや鮮烈な色、少し悪趣味なほど自由な小道具も、「正しく見せる」ことから距離を取っています。
歌詞では他人の批判を笑い飛ばし、MVでは常識的な整合性そのものを笑い飛ばす。そのため映像と歌詞は、かなり同じ方向を向いています。
「High Road」は、嫌なことを全部忘れればいいという単純なポジティブソングではありません。何に怒り、何を無視し、自分の時間をどこへ使うのかを自分で決める。その選択をKESHAらしい下品さとユーモアまで含めて肯定した曲です。
『High Road』から『TiK ToK』『Die Young』、そして現在のKESHAまで追っていくと、彼女が「パーティー・ガール」という過去を捨てたのではなく、自分の意思で取り戻していったことがより見えやすくなります。KESHAの代表曲やキャリア全体を続けて知りたい場合は、アーティストまとめページもあわせてチェックしてみてください。

