「TiK ToK」が街中で流れ、レディー・ガガが世界を驚かせ、ブルーノ・マーズが甘い歌声でデビューした年――それが2010年でした。
振り返ってみると、2010年の洋楽チャートは「ポップスの黄金期」と言っても過言ではないほど、今なお愛される名曲(アンセム)が大量に生まれた奇跡のような1年です。
あの頃、クラブで踊り明かした人も、ラジオにかじりついていた人も。 イントロを聴くだけで当時の空気が鮮明に蘇る、2010年の洋楽ヒットソングをまとめてご紹介します。久しぶりにボリュームを上げて、あの頃のバイブスに浸ってみませんか?
もくじ
Ke$ha – TiK ToK
酔っぱらったパーティーソングに聞こえるけど、実は“どうせやるなら振り切って楽しもう”という自己肯定ソングでもある一曲。だらしなさと強さが同居していて、2010年代ポップのカオスな空気を一番よく残している。朝から聴くとダメ人間モードに拍車がかかるので、夜に解禁したいタイプ。
Lady Antebellum – Need You Now
深夜1時過ぎに元恋人に電話したくなる、あの最悪で最高な時間帯をまるごと封じ込めたような名バラード。カントリーとポップの中間を滑るサウンドが絶妙で、“大人の失恋”をここまでドラマチックに歌い切った曲はそう多くない。静かなのに、心の中ではずっとサビが鳴り続ける。
Katy Perry – California Gurls
砂糖をぶちまけたみたいなサウンドとMVで、2010年の夏を丸ごとキャンディ色に塗り替えたポップアンセム。Snoop Doggとの組み合わせも当時は軽い事件だった。聴いた瞬間に気温が3度上がるような曲で、日本の夏フェスの洋楽DJセットでもいまだに強い破壊力を持っている。
Usher – OMG ft. will.i.am
スタジアム対応のEDMポップとR&Bボーカルをつないだ、橋渡し的トラック。Usherの伸びやかなファルセットと、will.i.amらしい機械的なフックがぶつかり合って、2010年以降のクラブサウンドを予告するような一本になっている。歌というより“フレーズで記憶される”タイプのヒット曲。
B.o.B – Airplanes (feat. Hayley Williams)
“願いごとを星じゃなくて飛行機に託す”というアイデアが見事なクロスオーバー・ラップ。B.o.BのラップとParamoreのHayleyのフックが、希望と諦めの間を揺れ動く感情を描き出す。2010年代前半の“エモ×ラップ”路線の先駆けとしても、今振り返る価値のある一曲。
Eminem – Love The Way You Lie ft. Rihanna
破滅的な恋愛をラップとR&Bで描いた、かなり重いけれど目をそらせないコラボ曲。Eminemの攻撃的なヴァースと、Rihannaの諦めと執着が入り混じったフックが痛いほど刺さる。ヒット曲でありながら、決して万能感では終わらないところが2010年代らしいリアリティ。
Lady Gaga – Bad Romance
イントロ数秒で世界を支配した、モンスター級ポップ。グロテスクさとハイファッションが同居する世界観は、もはや1本のMVというよりポップカルチャーの転換点そのもの。“ラララ〜”のフックは、2010年代を語る上で外せない最重要メロディの一つだと思う。
B.o.B – Nothin’ On You (feat. Bruno Mars)
まだ“売れる前のBruno Mars”の声を前面に押し出した、爽やかなラブソング・ラップ。B.o.Bの軽やかなフロウの上で、Brunoがひたすら相手を褒めちぎるサビを歌い上げる構図が気持ちいい。ゴリゴリのラップではなく、ポップスとして愛された数少ないヒットの一つ。
Enrique Iglesias – I Like It
ラテン・ポップとクラブサウンドを直結させたパーティーチューン。Enriqueの色気ある声に、ビートはほぼEDM前夜のムードで、とにかく体を動かしたくなる。2010年当時の洋楽チャートを一気にフロア寄りに傾けた一曲で、“ラテン=ダンスフロア”の図式を再確認させた。
Jason Derulo – In My Head
“頭の中ではもう恋が始まってる”という片想いソングを、ダンスポップに落とし込んだ一曲。Jasonらしい高音域のフックと、ほどよく硬いビートが心地いい。歌詞はそこそこ重いのに、サウンドがライトだからこそ、10代〜20代のリアルな距離感にハマったタイプのヒット。
Rihanna – Rude Boy
カリブのリズムとポップなメロディが融合した、Rihannaの原点回帰的トラック。歌詞の内容はかなり攻めているのに、カラフルでローポリっぽい世界観が中和していて、“強いけど遊び心もある”彼女のキャラクターをよく表している。クラブでもラジオでも違和感なく流せる絶妙なライン。
Lady Gaga – Telephone ft. Beyoncé
GagaとBeyoncéという当時最強クラスの2人が、全力でポップアートをやり合った問題作。曲単体でも十分キャッチーだけど、やはり本領発揮は長尺MV。ジャンクフード、牢獄、ロードムービー的展開…と、情報量が多すぎて一度では追いきれない。2010年代らしい過剰さを楽しむための一本。
Katy Perry – Teenage Dream
“10代の恋”を決定版として言語化してしまったようなポップソング。甘さと少しの哀しみが同居したメロディで、実は大人になってから聴くほど刺さり方が変わる曲でもある。カリフォルニアの海風とモーテルの匂いが混ざったような、この時期のKatyならではの質感がたまらない。
Bruno Mars – Just The Way You Are
“そのままでいい”という言葉を、照れずに真正面から歌い切ったラブソング。Bruno Marsのボーカルの説得力と、装飾を抑えたアレンジが相まって、結婚式ソングとしても定番になったのは必然。時代が変わっても古びない、“教科書的ポップバラード”の稀有な成功例。
JAY-Z – Empire State Of Mind ft. Alicia Keys
ニューヨークへのラブレターであり、同時にドキュメントでもある一曲。Jay-Zの視点で語られる現実と、Alicia Keysの飛翔感あるサビが、都市の光と影をそのまま音にしている。街の名前がタイトルに入る曲は多いけれど、ここまで“都市そのもの”になった曲は数少ない。
Usher – DJ Got Us Fallin’ In Love ft. Pitbull
クラブでの“一夜限りかもしれない恋”をテーマにした、EDM前夜のフロアポップ。Usherの滑らかなボーカルと、Pitbullの鉄板パーティーラップが鉄壁の組み合わせ。歌詞の内容はかなり王道なのに、サウンドの抜け感が良くて、今の耳で聴いても意外と古さを感じにくい。
Travie McCoy – Billionaire ft. Bruno Mars
“億万長者になったら何をしたい?”という、妄想ラップの形をした社会風刺ポップ。Bruno Marsのレゲエ風味のフックが耳に残りまくる。明るいサウンドの裏で、格差や名声への欲望を軽く突っついてくる感じが、2010年前後のUSポップの空気をよく表している。
Iyaz – Replay
いわゆる“一発大ヒット”枠だけど、メロディの強さは今聴いてもまったく色あせない。レゲエポップ寄りのトラックに、シンプルでキャッチーなフックを乗せただけの構造なのに、そこがむしろ時代を超える要因になっている。サビのメロディは、2010年代ポップの中でもかなり上位に入る中毒性。
David Guetta · Akon – Sexy Bitch
フレンチEDMとUS R&Bががっちり握手した、クラブポップの象徴的コラボ。今聴くと歌詞もタイトルもかなり直球すぎるが、当時の“夜”の空気を説明するにはこれ以上ない教材。Akonの声とGuettaのビートが組み合わさった瞬間、“世界共通クラブアンセム”になっていく過程が見える一曲。
Ke$ha – Your Love Is My Drug
恋愛依存を思い切りポップに描いた、“危険なほどハイテンション”なポップソング。歌詞だけ読むとかなり重いのに、サウンドは明るくて、そこに当時のパーティー文化の危うさが透けて見える。耳触りの軽さとコンセプトのダークさのギャップが、Ke$haというアーティストの核心部分。
The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling
「今夜は絶対良い夜になる」と宣言してしまう、2000年代後半〜2010年代前半を象徴するパーティーアンセム。シンプルなコード進行と、みんなで歌えるサビ。フェス、結婚式、スポーツイベント…どこで流れても機能してしまう、汎用性モンスター。これが流れると“夜が始まる”感覚は、今も多くの人の身体に残っているはず。
Owl City – Fireflies
電子音のきらめきで作り上げた、ベッドルームポップの代表作。淡い夢のような歌詞と、やさしいボーカルが、現実逃避でもあり癒しでもある不思議な時間を作る。YouTube世代の“深夜の部屋で一人で聴きたい曲ランキング”があったら、確実に上位に入るタイプの1曲。
Jason Derulo – Ridin’ Solo
“失恋したけど、むしろ一人最高じゃない?”というポジティブな開き直りソング。ダンスフロア映えするビートの上で、Jason Deruloが軽やかに歌うことで、失恋ソングなのに全然暗くならないのがポイント。車の窓を開けて走りながら聴きたい、“身軽になった週末”のテーマ曲。
Nelly – Just A Dream
少しトラップ寄りのビートの上で、過ぎ去った恋を振り返るNellyの声が切ないミッドテンポ。ラップと歌の中間のようなフロウが、リアルな独り言を聞いているような距離感を生む。派手さはないけれど、2010年代序盤のUSラジオを象徴する“しみじみ系ヒット”の一つ。
Michael Bublé – Haven’t Met You Yet
“まだ出会ってないけど、いつかきっと”という前向きな恋の予感を描いたスウィングポップ。Bubléらしいジャズ寄りのアレンジながら、ポップスとしても十分キャッチーで、洋楽入門としても勧めやすい一曲。雨の日の朝にコーヒーと一緒に流したくなる、上品なポジティブさが魅力。
Rihanna – Hard ft. Jeezy
ミリタリー風のビートとビジュアルで、“戦闘モードのRihanna”を強烈に印象づけた一曲。ダンスフロア向けというより、“私を甘く見るな”という宣言に近い。Jeezyのラップが入ることで、よりストリート感が増していて、ポップスターとヒップホップの距離感がグッと縮んだ瞬間でもある。
Rihanna – Only Girl (In The World)
タイトルにふさわしく、“世界に二人きり”の多幸感をEDM寄りサウンドで一気に爆発させたダンス・ポップ。サビでの開放感がとにかく強く、リリース当時からフェスやクラブでの定番。Rihannaのディスコグラフィーの中でも、“完全に光側に振り切った”貴重な瞬間の一つ。
Taylor Swift – Mine (Taylor’s Version)
若い二人の恋と、その先にある結婚や家族の景色までを描いた、“物語作家としてのTaylor”がよく出ている一曲。再録版では声の成熟とサウンドのクリアさが増していて、歌詞のストーリー性がさらに立体的に感じられる。カントリーポップの枠を越えて、人生の一章を切り取った短編小説のような存在。
Adam Lambert – Whataya Want from Me
傷ついた関係の中で、「いったい何を求めてるの?」と問いかけるロックバラード。Adam Lambertのレンジの広いボーカルが、苛立ちと優しさの間を行き来する感情を見事に表現している。ポップス寄りのロックが好きな人にも、純粋なシンガーの技量を聴きたい人にも刺さる一曲。
Justin Bieber – Baby ft. Ludacris
“世界が最初に出会ったJustin Bieber”を象徴するポップソング。ティーンの恋をまっすぐ描いたメロディの裏で、Ludacrisが半ば保護者のようにラップを乗せる構図が微笑ましい。賛否含めて当時のポップ文化を大きく動かした曲であり、今聴くとむしろ歴史資料として面白い。
Jason Derulo – Whatcha Say
Imogen Heapの「Hide and Seek」を大胆にサンプリングした、エレクトロR&B。歪んだボーカルサンプルとJasonの滑らかな歌声が、後ろめたさと甘さの混ざった空気を作り出している。2010年代のポップが“インディー文脈”を取り込んでいく入り口の一つとしても興味深い曲。
La Roux – Bulletproof
UKエレクトロポップの刃のような硬さと、中毒性の高いサビが印象的な一曲。“もう二度と傷つかない”という強い宣言を、キラキラというよりギラギラしたシンセの上に乗せているのが時代性を感じさせる。メインストリームとオルタナの中間に立っていた2010年代前半を象徴するトラック。
The Black Eyed Peas – The Time (Dirty Bit)
映画『ダーティ・ダンシング』の名フレーズを大胆に引用し、ダブステップ前夜のウネるベースで再構築した一曲。レトロと最新トレンドを同時に投げ込むこの雑さこそ、当時のBEPの勢い。ガチで音楽的に分析するとツッコミどころも多いが、フロアで流れた瞬間にすべてがどうでもよくなるタイプのキラーチューン。
Ke$ha – We R Who We R
LGBTQ+コミュニティにも強く支持された、“自分たちは自分たちのままでいい”というメッセージソング。エレクトロポップとしても完成度が高く、パーティーの文脈で聴いても、歌詞の意味を読み込んでも成立する二層構造になっている。2010年代前半の“自己肯定ポップ”の代表格。
My Chemical Romance – Na Na Na
カラフルなパンクSF漫画のような世界観で、MCRが再び暴れまわったカムバックソング。ひたすら連呼される「Na Na Na」のフックは、ライブで叫ぶために作られたようなもの。エモからもう一段ポップに振り切れたサウンドで、バンドの新章を高らかに宣言した一曲と言える。
Katy Perry – Firework
“君自身が花火なんだ”という、ストレートすぎるメッセージを真正面から歌い切ったアンセム。サビのメロディラインは、2010年代のポップポジティブの象徴と言っていいほどの説得力を持っている。落ち込んだときに聴くと、理屈を飛び越えてしっかり涙腺に来る、稀有な大衆ポップ。
Rihanna – What’s My Name? ft. Drake
RihannaとDrakeのケミストリーが、まだ“ほのかな距離感”の段階だった頃の貴重な記録。柔らかいトロピカルR&Bの上で、2人の声が自然に絡み合う。大人の色気というより、少し不器用な親密さが滲むところが、この曲ならではの魅力になっている。
Taio Cruz – Dynamite
タイトル通り、サビで感情が爆発するクラブポップ。その場でジャンプしたくなる4つ打ちとシンプルな歌詞で、英語が分からなくても“週末モードスイッチ”として機能する一曲。2010年前後の洋楽パーティーミックスにはほぼ必ず入っていた、当時の空気そのもののような存在。
Taio Cruz – Break Your Heart ft. Ludacris
“傷つける気満々”という、正直すぎるタイトルが逆に清々しいエレクトロR&B。太いシンセとTaioの伸びるフック、Ludacrisのラップが絡んで、サビで一気に抜けていく高揚感がクセになる。恋愛指南というより、“こういうタイプには気をつけろ”と教科書に載せたい曲。
Bruno Mars – Grenade
相手のためならどこまでも無茶をしてしまう、自己犠牲愛をテーマにしたドラマティックなバラード。Bruno Marsのボーカルはここでも圧倒的で、サビの高音域に込められた苦しさが、そのまま歌詞の痛みにつながっている。歌詞の重さと、ポップとしてのキャッチーさのバランスが絶妙。
Chris Brown – Yeah 3x
タイトルからして“パーティーで3回は叫ぶ”ことを前提に作られたダンスチューン。エレクトロポップ全盛期のサウンドで、サビのシンセがひたすら前向き。アーティスト本人への評価とは切り離して、“2010年代のダンスフロア・サウンドのテンプレ”として聴き直す価値はある。
Shakira – Loca
ラテンポップとストリート色のあるビートが合わさった、“良い意味でやんちゃ”なShakiraの一面が出た一曲。タイトル通り少しクレイジーな恋の勢いを、そのままリズムに乗せている。英語版とスペイン語版を聴き比べると、ニュアンスの違いも楽しめるタイプの楽曲。
David Guetta Feat. Kid Cudi – Memories
Kid Cudiの少しけだるいボーカルと、Guettaのフロア志向のビートが意外なほど相性の良さを見せる一曲。“あの夜”を思い出しながら聴くのにちょうどいいテンポ感で、感傷と多幸感のバランスが絶妙。EDM全盛前夜の、まだ少し素朴さが残るダンス・ポップの空気が味わえる。
Jay Sean – 2012 (It Ain’t The End) ft. Nicki Minaj
マヤ暦“世界が終わる”ネタをポップソングにしてしまった、当時ならではの一曲。世界の終わり前夜にパーティーしよう、という発想自体が2010年代的で、今聴くとちょっとノスタルジック。Nicki Minajがまだ“本格ブレイク直前”だった時期のフロウを味わえるのもポイント。
Taylor Swift – Back To December
自分から謝る側に立つテイラー、という珍しい構図のバラード。ピアノを中心としたアレンジが、冬の冷たい空気と後悔の重さを丁寧にすくい取っている。カントリーポップからシンガーソングライターへと進化していく過程での重要な一歩で、今歌詞を読み直しても骨太な作品。
Orianthi – According To You
ギタリストとしてのテクニックとポップセンスを同時に見せつけた、ギターヒロイン系ロックの代表格。失恋相手に“あなたの評価はこうだけど、本当の私は違う”と言い返す歌詞は、エモいというより痛快。ギターソロ込みで、ロックバンド好きにも勧めたい一本。
Alicia Keys – Try Sleeping with a Broken Heart
失恋後の夜に眠ろうとする、その不可能に近い行為をテーマにしたソウルフルなR&B。Aliciaのピアノとビートの組み合わせが、都会の夜の孤独を静かに照らす。派手な高音に頼らずとも、ここまで感情を伝えられるのかという、歌い手としての力量が光る曲。
P!nk – Raise Your Glass
マイノリティやアウトサイダーに向けた“乾杯ソング”。P!nkらしいひねくれたユーモアと、真っ直ぐなエンパワメントが同居している。大声でサビを歌えばとりあえず元気が出るが、歌詞を読み込むと、社会の中で居場所を探してきた彼女自身の物語とも重なる。
Ke$ha – Blow
“深夜2時以降のテンション”そのものを曲にしたようなエレクトロポップ。ストーリー性より、瞬間的な悪ノリの連続で押し切るタイプの楽曲で、ある種の時代性が詰まっている。真面目に評価するより、“ここまで振り切れたパーティーソングがチャート1位近辺にいた”という事実にニヤリとしたい。
Selena Gomez & The Scene – Naturally
ダンスフロア寄りのエレクトロポップと、当時まだあどけなさの残るSelenaの声が、意外にも良い化学反応を起こしていた一曲。サビのメロディはシンプルながら耳に残りやすく、“ティーンポップからクラブポップへ”の橋渡しを担った存在と言える。
Avril Lavigne – Alice
『アリス・イン・ワンダーランド』にインスパイアされた、ダークファンタジー寄りのAvril。ポップパンク路線とは違う、映画的なスケール感のあるサウンドが新鮮だった。夢と悪夢の境界線をさまようような、当時のティーンの不安も重ね合わせて聴きたくなる曲。
Christina Aguilera – Not Myself Tonight
自己解放とセルフ・リインベント(再構築)をテーマにしたエレクトロR&B。かなり攻めたビジュアルとのセットで語られることが多いが、音だけで聴いても、2010年代ポップのエッジとR&Bボーカルの共存を試みているのが分かる。商業的には賛否あったが、キャリアの中では重要なターニングポイント。
KT Tunstall – Fade Like A Shadow
アコギ一本の印象が強いKTが、エレクトロ寄りのアレンジに踏み込んだ過渡期のトラック。リズミカルなビートの上に、彼女らしい切ないメロディラインが乗ることで、フォークとインディーポップの中間点のような質感が生まれている。静かなのに足取りが前に進んでいく曲。
Scissor Sisters – Fire With Fire
ディスコ風味を得意とする彼らが、より王道ロックバラード寄りに振り切った意欲作。タイトル通り“火には火で対抗する”というテーマを、壮大なサビとストリングスで押し上げていく。クラブ寄りの彼らしか知らない人にこそ聴いてほしい、もう一つの顔が見える一曲。
Miley Cyrus – Can’t Be Tamed
“飼いならされない自分”をテーマに掲げた、ある意味でマイリーの脱・子役宣言ソング。エレクトロロック寄りのサウンドと、檻を破るようなMVがセットで、当時大きな話題を呼んだ。ここから先の大胆な変化を予告していたと考えると、非常に象徴的な1曲に見えてくる。
Jay Sean – Do You Remember ft. Sean Paul, Lil Jon
R&BとダンスホールとUSクラブサウンドのちょうど真ん中を狙った、ハイブリッドなパーティーチューン。“あの夜を覚えてる?”という甘いノスタルジーを、フロア対応のビートで包み込んでいる。2010年頃の多国籍コラボ文化を象徴する一曲でもある。
Kylie Minogue – All The Lovers
ダンスフロアを優しく包み込むような、Kylieらしい上品なエレクトロポップ。多幸感のあるサビは、そのままフェスの朝にかけたくなるような清涼感を持っている。ラブソングでありながら、個人の恋愛を超えて“愛そのもの”を祝福しているような広がり方をする名曲。
3OH!3 – My First Kiss (feat. Ke$ha)
エレクトロ×ポップ×おバカなユーモアが全部混ざった、2010年ならではのキラーチューン。3OH!3の皮肉っぽいノリに、Ke$haのパーティー感が加わって、完全に“真面目に聴いてはいけない”タイプの楽しさに振り切れている。シーンとしては小さな一角だが、時代の空気をよく伝える一曲。
Ne-Yo – Beautiful Monster
滑らかなR&Bボーカルに、ダークなエレクトロビートを合わせた、Ne-Yoの“クラブ化”を象徴するトラック。恋人を“美しい怪物”と呼ぶ歌詞は、耽美さと危うさが同居していて、当時のポップカルチャーのダークトーンともリンクしている。踊れて、少しだけゾクッとする。
The Chemical Brothers – Swoon
ビッグビートのレジェンドが、祝祭感と恍惚感を極限まで押し上げたダンストラック。サビで広がっていくシンセの波は、ヘッドフォンよりも大きなスピーカーで浴びたいタイプの音。メインストリームのポップソングとは違う文脈で、2010年という年の別の顔を見せてくれる一曲。
Justin Bieber – Somebody To Love Remix ft. USHER
ダンスパフォーマンスを前面に押し出した、“踊れるBieber”を印象づけた一曲。Usherとの師弟関係が、そのままサウンドと映像に反映されていて、R&B寄りのリズムが心地いい。バラード路線のイメージが強い人ほど、ギャップで楽しめるタイプのトラック。
Jamiroquai – White Knuckle Ride
ディスコファンクの旗手が、より現代的なクラブサウンドと融合したアップテンポな一曲。ドライブにぴったりな疾走感がありつつ、ベースラインは相変わらず太い。長いキャリアの中で、時代に応じてサウンドを更新し続けるJamiroquaiの柔軟さがよく分かる。
Craig David – One More Lie (Standing In The Shadows)
自身の2ステップR&Bルーツに、クラブポップ要素を重ねた“2010年代版Craig David”とも言える曲。タイトル通り“もう一度だけ嘘を重ねる”弱さを歌いつつ、ビートは前向きに進んでいく。00年代R&Bを知っている耳で聴くと、時代の変化と本人のアップデートぶりが面白い。
Selena Gomez & The Scene – Falling Down
ティーンポップとロック要素が混ざった、初期Selenaの“バンド感”が出ている一曲。完璧なボーカルよりも、勢いと若さで押し切る感じが魅力で、当時のディズニーチャンネル〜MTVラインを象徴するサウンド。後のソロ期と聴き比べると、成長の軌跡がくっきり見える。
Adam Lambert – For Your Entertainment
グラムロックの遺伝子を2010年代ポップに移植したような一曲。Adam Lambertの圧倒的な声とビジュアルが、“ショーとしてのポップ”の可能性を広げている。サウンドはクラブ寄りでも、精神は完全にロックスター。量産型ポップに飽きたときにこそ聴きたくなる存在感。
エステラ 
