元ネタはTalking Heads|セレーナ・ゴメス「Bad Liar」MVで描く隠せない恋心

Selena Gomez(セレーナ・ゴメス)の「Bad Liar」は、Talking Headsの「Psycho Killer」のベースラインを取り入れた、2017年発表のポップソングです。
この記事では、元ネタとなった楽曲との関係、歌詞で描かれる“隠せない恋心”、そして70年代風のMVでセレーナが複数の人物を演じる意味を解説します。
派手なサビで押し切るタイプではなく、少し低い温度のまま中毒性を残すところに、この曲ならではの強さがあります。

目次

元ネタはTalking Heads「Psycho Killer」のベースライン

「Bad Liar」でまず押さえておきたいのは、Talking Headsの1977年の楽曲「Psycho Killer」のベースラインを取り入れているという点です。

「Psycho Killer」は、ニューウェーブ/ポストパンクの文脈で語られることの多い代表曲のひとつ。そこにある印象的なベースの動きを、セレーナ・ゴメスのポップソングへ移し替えることで、「Bad Liar」は通常のラジオ向けポップとは少し違う質感を持っています。

ここで面白いのは、元ネタを派手に見せびらかすのではなく、曲の骨格として自然に使っているところです。ベースラインが前に出ているのに、セレーナの声はあくまで軽やかで、息づかいの近さも残っている。そのズレが、曲全体に少し不思議な緊張感を生んでいます。

長く洋楽を聴いてきた耳には、この曲の魅力は“強い声”ではなく、“少し引いた声でどこまで記憶に残せるか”にあるように感じられます。

「Bad Liar」の意味は、気持ちを隠せない人

タイトルの「Bad Liar」は、直訳すると「嘘が下手な人」という意味です。

この曲では、好きな相手への気持ちを隠そうとしても、うまく隠せない語り手が描かれています。つまり「Bad Liar」は、単に嘘つきというより、恋心をごまかそうとしても表情や態度に出てしまう人と受け取ると分かりやすいです。

歌詞の中心にあるのは、失恋の痛みというよりも、新しい恋に落ちていくときのそわそわした感覚です。冷静でいようとしているのに、心の中ではすでに相手のことでいっぱいになっている。その“平静を装うほどバレてしまう感じ”が、曲名とサウンドの両方に重なっています。

英語表現としても、「bad liar」は日常的に使いやすい言い回しです。ただ、この曲では少し皮肉っぽく、そしてかわいげのある自己認識として響きます。

70年代風MVで描かれる、視線と秘密

「Bad Liar」のMVは、Jesse Peretzが監督を務めた映像作品です。MVではセレーナ・ゴメスが高校生、母親、父親、教師など複数の役を演じ、ひとつの学校と家庭の中にある視線、秘密、すれ違いを見せていきます。

映像は70年代風の衣装、髪型、色味が印象的で、曲に使われているTalking Heads由来のレトロな質感とも自然につながっています。単に昔風のファッションを見せるのではなく、登場人物たちの距離感や、言葉にできない感情を少し乾いたトーンで描いているのがポイントです。

特に、高校生としてのセレーナが周囲の大人たちを見つめる構図は、曲の「隠そうとしても隠せない」というテーマとよく合っています。誰かの視線、誰かの表情、誰かの沈黙から、気持ちは漏れてしまう。MVはその感覚を、説明しすぎずに映像で見せています。

今見返すと、派手なダンスや大規模なセットではなく、表情と設定だけで引き込む作りが印象に残ります。

セレーナ・ゴメスの声が、曲の“嘘の下手さ”を引き立てている

「Bad Liar」は、歌い上げるタイプの曲ではありません。むしろセレーナ・ゴメスの声は、力を抜いたまま、リズムの上を軽く滑るように置かれています。

この控えめな歌い方が、曲のテーマにとても合っています。大げさに感情を爆発させないからこそ、逆に「本当は隠せていない」感じが出る。声の近さ、息の抜け方、リズムに少し寄り添うようなフレーズが、恋心を隠しきれない語り手の雰囲気を作っています。

サウンド面では、ベースラインとパーカッションが曲を引っ張り、ボーカルはその隙間で表情を変えていきます。ポップソングでありながら、音数を詰め込みすぎないところが、この曲を少し大人びた印象にしています。

セレーナの代表曲の中でも、「Bad Liar」は“静かな中毒性”で記憶に残るタイプの一曲です。

なぜ「Bad Liar」は評価されやすい曲なのか

「Bad Liar」は、2017年のポップシーンの中でも、かなり個性的な立ち位置にある楽曲です。

理由は大きく3つあります。

  • Talking Headsのベースラインを、現代的なポップに自然に落とし込んでいる
  • セレーナ・ゴメスの声の軽さを、弱点ではなく魅力として使っている
  • MVが曲のテーマを、恋愛だけでなく“視線”や“役割”の物語として広げている

特に、元ネタの扱い方はこの曲の大きな魅力です。過去の名曲を借りながらも、単なる懐かしさに寄せすぎず、セレーナ自身のミニマルで少しミステリアスなポップとして成立させています。

洋楽を長く聴いていると、サンプリングやインターポレーションが曲の中心になる作品ほど、元ネタに負けてしまうことがあります。でも「Bad Liar」は、元ネタの存在感を残しながら、セレーナの声とキャラクターで別の曲として立たせているところが強いです。

今聴き返すと、控えめなポップの強さが見えてくる

「Bad Liar」は、爆発的なサビや分かりやすい高揚感で押す曲ではありません。

その代わり、ベースライン、息の近いボーカル、少し乾いたリズム、70年代風のMV演出が合わさって、じわじわと印象を残します。恋に落ちる瞬間の高鳴りを、甘く大げさに描くのではなく、少し不器用で、少し照れくさいものとして見せているのがこの曲の魅力です。

初めて聴く人には、まずベースラインの中毒性を。
セレーナ・ゴメスの楽曲を追ってきた人には、彼女が“声を張らないポップ”でどこまで表現できるかを。
そしてMVを見る人には、複数の役を演じるセレーナの表情と、レトロな映像の奥にある秘密の気配を楽しんでほしい一曲です。

「Bad Liar」は、好きな気持ちを隠すほど、逆に本音が見えてしまう曲です。静かなのに忘れにくい、その少し厄介な余韻こそが、このMVをもう一度見たくさせます。

セレーナ・ゴメスの代表曲・MVをもっと知る

「Bad Liar」のように、セレーナ・ゴメスの楽曲には、恋愛の揺れや心の奥にある感情を、ポップで聴きやすい形に落とし込んだ作品が多くあります。代表曲やMVの見どころをまとめて知りたい方は、セレーナ・ゴメスのアーティストまとめページもあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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