「S&M」歌詞の意味とは?リアーナが定番ことわざを“過激”に塗り替えた不敵なメッセージ

リアーナ(Rihanna)のヒット曲『S&M』。その過激なタイトルやビジュアルの裏には、メディアからの激しいバッシングを逆手に取った痛烈なメッセージが隠されています。本記事では、有名な英語のことわざを大胆に改変した歌詞の意味や、風刺に満ちたMVの見どころを詳しく解説。長年洋楽を追ってきた記者の視点とともに、この曲が持つ真のエネルギーへと迫ります。

曲名S&M
アーティストRihanna(リアーナ)
リリース日2011年1月21日(シングルリリース)
収録アルバムLoud
主な実績全米ビルボードHot 100 1位獲得 / 世界10カ国以上のチャートで首位を記録
目次

タイトル「S&M」に込められた意味と、定番ことわざの「過激な改変」

一見すると性的なフェティシズムをストレートに歌っているように思えるタイトルですが、ここでの「S&M(サディズム&マゾヒズム)」は、リアーナとメディア(あるいは大衆)との歪んだ関係性を表す強力なメタファー(比喩)として機能しています。

その象徴となるのが、サビで強烈に繰り返される以下のフレーズです。

Sticks and stones may break my bones, but chains and whips excite me

これは英語圏で誰もが知る古い児童向けのことわざ「Sticks and stones may break my bones, but words will never hurt me(棒や石は私の骨を折るかもしれないが、言葉は私を傷つけられない)」を大胆にパロディ化したものです。リアーナは「言葉は傷つけられない」という後半部分を、あえて「でも鎖と鞭は私を興奮させる」と言い換えました。

メディアから浴びせられる容赦ない言葉の暴力やゴシップ記事の嵐を、単に「傷つかない」と耐えるのではなく、「もっと叩いてみせなさい、それすらも私のエンターテインメントのエネルギー(快感)に変えてやる」と言い放つ、ポップスターとしての圧倒的な不敵さと覚悟がこの一行に凝縮されています。

メディアのバッシングを逆手に取る!メリーナ・マツォーカス監督が描いたMVの風刺世界

この楽曲のメッセージ性を視覚的に完璧なものへと昇華させたのが、気鋭の映像作家 メリーナ・マツォーカス(Melina Matsoukas) 監督です。後にビヨンセの歴史的名作『Formation』なども手掛ける彼女は、ポップでカラフルな色彩の中に、刺すような毒を巧みに忍び込ませました。

MVの冒頭、リアーナは新聞紙で覆われた壁に透明なラップで文字通り「縛り付けられた」状態で登場します。周囲を取り囲むのは、ノートを構えた無数の記者たち。さらに、記者たちをロープで縛って犬のように従えるシーンや、口を塞がれたマスコミ関係者の姿など、過激でサディスティックな演出が次々と繰り出されます。

これらはすべて、プライベートの一挙一動を監視され、面白おかしく消費されるトップスターの過酷な現実をユーモラスに、かつ攻撃的に告発したものです。メディアに生殺与奪の権を握られているように見せかけて、実はそのパワーバランスを完全にコントロールしているのは自分自身であるという、リアーナの女王然とした佇まいが最高にスタイリッシュに描かれています。

歌詞から紐解く「perfectly good at it」が持つ自立した大人のスタンス

過激なフレーズが目立つ本作ですが、日常会話やSNSのニュアンスとしても非常に興味深い英語表現が含まれています。

‘Cause I may be bad, but I’m perfectly good at it

ここで使われている 「perfectly good at it」 は、直訳すると「それを行うことが完璧に得意である」という意味です。「私は悪い子かもしれないけれど、それをやり通すことにかけては天才的なの」という、世間からの「バッド・ガール」というレッテルを逆手に取って誇りに変えてしまう、強烈な自己肯定のフレーズです。

誰かに自分のスタイルや生き方を批判されたとき、縮こまるのではなく「これが私のスタイルだし、私はこれを完璧に乗りこなしている」と胸を張るような、自立した大人のタフなマインドセットがこの短い言葉から読み取れます。

2010年代のエレクトロ・ポップ全盛期に、この曲が放った圧倒的な歪みとエネルギー

2010年代初頭の洋楽シーンは、きらびやかなシンセサイザーと四つ打ちのダンスビートがチャートを席巻していました。その狂騒の渦中にあって、この曲が放った刺激は一線を画すものがありました。

長年洋楽の変遷を追ってきた耳には、単にクラブで消費されるアッパーチューンというだけでなく、彼女の私生活を取り巻くゴシップに対するリアルな怒りと、それを極上のポップアートへと昇華させる強靭な意思が、あの低くうねるシンセベースの重低音から生々しく伝わってきたのを鮮烈に覚えています。ただ綺麗に調律されただけのポップソングにはない、どこかヒリヒリとした「歪み」と「エッジ」があるからこそ、15年近くが経過した今聴き返しても全く古びることなく、私たちの胸を熱くさせる芯の強さを保ち続けているのです。

理不尽な視線を跳ね返したい夜に聴く、最高のデトックス・アンセム

もし日々の生活の中で、他人の勝手な評価や、理不尽な言葉の視線に心が擦り切れそうになったなら、一日の終わりに部屋の明かりを落とし、ヘッドホンのボリュームを少しだけ上げてこの曲を再生してみてください。

イントロのユーモラスなコーラスから重厚なビートへと雪崩れ込んだ瞬間、世間の雑音はすべてシャットアウトされ、自分だけの不可侵の領域が立ち上がります。リアーナの不敵な歌声は、他人の言葉に振り回されず、自分の人生の主導権を完全に握り直すための最高のパワーを分け与えてくれるはずです。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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