ロックの記号で壊す「Rock Music」|チャーリーXCX MV解説

Charli xcx(チャーリーXCX)の「Rock Music」は、2026年5月に公開されたシングル/MVです。
タイトルだけを見るとロックへの転向曲のように感じますが、実際には歪んだギター、モッシュ、破壊的な映像を使って、“ロックらしさ”そのものをポップに解体する曲として楽しめます。
この記事では、MVの見どころ、歌詞のニュアンス、BRAT後のCharli xcxの変化を整理します。

【Charli xcx:チャーリーXCX】
生年月日:1992年8月2日
出身:イギリス・ケンブリッジ
特徴:実験的なポップ感覚とクラブカルチャーを結びつけるシンガー/ソングライター
音楽性:エレクトロポップ、ハイパーポップ、ダンスポップを横断しながら、ポップの枠を押し広げる

目次

「Rock Music」は本当にロックなのか

「Rock Music」は、ロックの音をそのまま真面目に再現する曲というより、ロックが持つ記号をCharli xcx流に再編集した曲です。

歪んだギター、荒いビート、短く切り込む構成、挑発的なボーカル。たしかに表面にはロック的な要素があります。けれど、曲の芯にあるのは、Charli xcxらしい人工的で鋭いポップ感覚です。

ここがこの曲の面白いところです。
ロックを“本格的にやる”というより、ロックのポーズ、荒さ、反抗性、ライブ感を借りながら、ポップスターが次の形へ進むための爆発音として鳴らしているように聴こえます。

洋楽を長く追っていると、ジャンル変更を宣言する曲よりも、ジャンルの境界をからかう曲のほうが、あとから強く残ることがあります。「Rock Music」はまさにそのタイプの一曲です。

MVはロックの象徴を次々に壊していく

MVの監督はAidan Zamiri。Charli xcxの近年の映像表現ともつながる、ラフでファッション性の高い映像が印象的です。

映像では、ロックカルチャーを連想させるモチーフが次々に登場します。

  • モノクロを基調にしたざらついた質感
  • テレビを投げるような破壊的なイメージ
  • ギターを壊す場面
  • ヘッドバンギングやモッシュを思わせる群衆
  • タバコ、ホテル、車内などの荒れたムード

これらは単なる“かっこいいロック風MV”ではなく、ロックの定番イメージをあえて過剰に並べているようにも見えます。

だからこそ、MV全体には少し笑えるほどの勢いがあります。かっこよさと悪ふざけ、ファッションと混沌、リアルな汗っぽさと作り込まれた人工感。そのバランスが、Charli xcxらしいポップの批評性につながっています。

歌詞の中心にあるのは、ジャンル変更より創作への衝動

歌詞では、ダンスフロアの終わりを匂わせるような言葉や、身体を張るような表現が登場します。ここだけを切り取ると、BRAT的なクラブ感覚から離れ、ロックへ進む宣言のようにも読めます。

ただし、この曲の語り口はかなり皮肉っぽいです。
“ロックをやる”というより、何かを壊してでも次へ行きたい、同じ成功を繰り返したくない、という創作の焦りや欲望が前に出ています。

英語表現として見ると、「rock music」というタイトル自体もかなり直球です。だからこそ、逆に冗談にも宣言にも聞こえる。シンプルな言葉をあえて大きく掲げることで、Charli xcxはジャンル名そのものをポップな小道具に変えています。

BRAT後の一手として聴くと、さらに面白い

Charli xcxは2024年の『BRAT』で、クラブ、インターネット文化、自己演出、脆さを一気に結びつけました。その後に「Rock Music」が出てきたことには、大きな意味があります。

『BRAT』の延長でさらにダンスフロアを拡張するのではなく、あえてギター、破壊、モッシュの方向へ振る。これは、成功した型をなぞらないための転換にも見えます。

ただ、完全に過去を捨てた曲ではありません。
加工されたボーカル、短く強い構成、自己演出的な言葉選びには、これまでのCharli xcxらしさが残っています。つまり「Rock Music」は、BRAT後の反動でありながら、Charli xcxのポップ実験の続きでもあります。

音の聴きどころは、荒さと短さのバランス

この曲は、長く展開してドラマを作るタイプではありません。短い時間の中で、ギターの圧、声の加工、ビートの勢いを一気にぶつけてきます。

聴きどころは、きれいに整ったロックサウンドではなく、少し雑に見えるほどの勢いです。ギターはラフに鳴り、ボーカルは冷静で、全体はどこかスタジオで作り込まれた人工物のようにも響きます。

このズレが気持ちいい曲です。
ロック的な熱さを使いながら、本人の声はどこか醒めている。その温度差が、曲全体に皮肉と高揚感を同時に生んでいます。

どんな人に刺さる曲か

「Rock Music」は、分かりやすいメロディのポップソングを求めて聴くと、少し変化球に感じるかもしれません。

一方で、次のような人にはかなり刺さりやすい曲です。

  • 『BRAT』以降のCharli xcxの変化を追いたい人
  • ロックとポップの境界が曖昧な曲が好きな人
  • MVのファッション、質感、混沌とした映像表現を楽しみたい人
  • 短く強いインパクトのある洋楽を探している人
  • “ジャンルごっこ”をあえて楽しむポップが好きな人

今あらためて聴くと、この曲はロックへの転向宣言というより、「次は同じ場所にいない」というCharli xcxの身振りに近いです。だからこそ、曲の短さ以上に、次の作品への予告編のような余韻があります。

もう一度MVを見たくなる理由

「Rock Music」のMVは、曲の説明映像ではありません。むしろ、曲と同時に“ロックらしさ”を作り、壊し、からかっている映像です。

ギターを壊す、群衆が押し寄せる、モノクロの画面がざらつく。そうした場面は、ロックの歴史にある定番イメージを使いながら、Charli xcxのポップスターとしての現在地を強く見せています。

見終わったあとに残るのは、「これは本当にロックなのか?」という問いよりも、「Charli xcxは次にどこまで壊してくれるのか」という期待です。
その期待を残せるところが、この曲とMVのいちばん面白い魅力です。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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