スーパーヒーローやおとぎ話のような恋ではなく、「自分のそばにいてくれる誰か」を求める曲。
The Chainsmokers & Coldplayの「Something Just Like This」は、壮大なEDMサウンドの中で、意外なほど等身大の愛を歌っています。
公式リリックビデオでは、子どもの想像力とヒーロー像が重なり、歌詞のテーマをまっすぐ見せてくれます。
「Something Just Like This」は、完璧さではなく身近な愛を求める言葉
タイトルの「Something Just Like This」は、直訳すると「まさにこんなもの」「こういう感じのもの」という意味です。
歌詞では、アキレス、ヘラクレス、スパイダーマン、バットマンのような存在が並べられます。ただし、語り手が本当に求めているのは、超人的な力を持つ誰かではありません。
むしろこの曲は、「特別すぎる相手」ではなく、手を伸ばせば届くような関係を肯定している曲として受け取れます。大きなドロップで気分を上げながら、歌詞の芯はとても普通の幸福に向いている。そのズレが、この曲をただの派手なコラボ曲で終わらせていません。
ヒーローの名前を並べるほど、普通の恋が浮かび上がる
この曲で面白いのは、神話やコミックのヒーローを引き合いに出しながら、最終的には「そんな完璧さはいらない」と歌っているところです。
普通ならヒーローの名前は、強さや憧れを表すために使われます。しかし「Something Just Like This」では、その名前が並ぶほど、語り手の望みが小さく、具体的に見えてきます。
誰かを救う力ではなく、そばにいられること。
空を飛ぶことではなく、抱きしめられる距離にいること。
この曲は、壮大な比喩を使いながら、最後には日常のほうへ着地していきます。
リリックビデオが描く、子どもの想像力と現実の距離
公式映像は、通常のストーリーMVというより、歌詞とアニメーションを組み合わせたリリックビデオです。
映像では、ヒーローへの憧れや子どもらしい想像のモチーフが、曲の言葉と重なるように配置されています。派手な実写ドラマで恋愛を説明するのではなく、手描き風のタッチや空想的な見せ方によって、「誰かの理想になりたい」という気持ちをやわらかく見せているのが特徴です。
この映像で大事なのは、ヒーローが本当に強いかどうかではありません。むしろ、ヒーローに憧れる小さな視点を通すことで、歌詞にある「自分はそんな存在ではない」という不安が見えやすくなっています。
Coldplayの声が、EDMのドロップを人間的にしている
サウンド面では、The Chainsmokersらしいシンセの反復とドロップが曲の推進力を作っています。リズムは大きく開けていきますが、Chris Martinの声が前に出ることで、機械的な高揚だけにはなりません。
特にサビへ向かう流れでは、歌声が先に感情の輪郭を作り、その後にビートが広がっていきます。EDMのドロップが「盛り上げるための装置」ではなく、言葉にできない願いが一気に外へ出る瞬間のように響くのが、この曲の強いところです。
音の作りに注目すると、Coldplayのスタジアム感とThe Chainsmokersの電子的な明るさが、競い合うのではなく同じ方向へ伸びているのが分かります。
2017年のコラボ曲としての存在感
「Something Just Like This」は、The Chainsmokersのアルバム『Memories…Do Not Open』期、そしてColdplayの『Kaleidoscope EP』期に位置づけられるコラボ曲です。
2017年のBRIT Awardsで披露されたこともあり、単なる配信シングルというより、両者のファン層が交差する大きなポップイベントとして受け止められた曲でもあります。
The Chainsmokersにとっては、EDMをより広いポップリスナーへ届ける曲。
Coldplayにとっては、バンドの大きなメロディをダンスミュージックの文脈に接続する曲。
その両方の役割があるため、今聴いても「コラボの名前の強さ」だけではなく、サウンドの設計そのものに意味が残っています。
大きな音で、普通の願いを歌う
「Something Just Like This」は、派手なドロップやヒーローの名前で聴き手を引き込みながら、最後に残るのはとてもシンプルな願いです。
特別な力を持つ必要はない。
完璧な恋でなくてもいい。
ただ、自分が頼れて、触れられて、そばにいられる関係がほしい。
大きな音で鳴っているのに、歌っていることは驚くほど近い。その近さがあるから、この曲はフェスでも、夜のドライブでも、ひとりで聴くプレイリストでも成立します。
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