「Such A Funny Way」というタイトルの“funny”は、単純な「面白い」ではなく、恋人の冷たい態度を見ながら「ずいぶん変わった愛し方だね」と皮肉る言葉として響きます。
サブリナ・カーペンターは、無視や距離を置かれる苦しさを真正面から嘆く代わりに、まるで相手を褒めるような言葉へ反転させています。
レトロポップの軽やかさと、その裏側にある傷ついた語り手。この温度差が「Such A Funny Way」の面白さです。
「Such A Funny Way」は、愛情ではない行動を愛情として言い換える歌
歌詞で描かれるのは、連絡を返さない、友人や家族から遠ざける、距離を取るといった相手の行動です。
普通に書けば、かなり苦い別れの歌になりそうな内容です。しかし語り手は、それらを「自分を愛しているからそうしている」とでも言うように解釈していきます。
もちろん、本当にそう信じているというより、分かっているのに認めたくない感情を、皮肉で包んでいると読む方が自然です。
タイトルの「Such A Funny Way」は、「そんな愛し方ってずいぶん変わってるね」という遠回しな攻撃にも聞こえます。怒鳴らないからこそ、言葉の棘が残ります。
笑える話に変えるほど、歌詞の痛みは大きくなる
2番では皮肉がさらに強くなります。
出会った夜のセーターを返されることを好意的な出来事のように語りながら、実際には関係を断とうとされている。さらに、連絡できない理由として同じ身内の不幸が繰り返されるという、明らかにおかしな言い訳まで登場します。
ここで重要なのは、サブリナが相手をただ悪者として描いているわけではないことです。
語り手自身も、矛盾した説明を都合よく受け入れようとしている。そのため曲の矛先は、ひどい相手だけでなく、傷つかないために現実を冗談へ変えてしまう自分自身にも向いているように響きます。
終盤になると、その笑いが「泣かないための笑い」であることがはっきりしてきます。
この曲ではユーモアが痛みを消しているのではありません。笑えば笑うほど、隠していた感情の輪郭が濃くなっていきます。
レトロポップの軽さが、歌詞の皮肉をさらに鋭くする
サウンドは重い失恋バラードへ向かわず、どこか懐かしさを感じさせるミドルテンポのポップとして進みます。
制作クレジットにはパーカッションに加え、サックス、トランペット、ヴァイオリンなども並びます。現代的なポップの輪郭を保ちながら、生楽器の色を差し込むことで、少し古いショーソングやクラシックポップを思わせる質感が生まれています。
この明るさが歌詞とは逆方向に働くのがポイントです。
深刻な伴奏で「私は傷ついている」と説明するのではなく、軽やかな音に乗せて相手のひどさを笑ってみせる。悲しい歌を楽しそうに歌うこと自体が、この曲最大の皮肉になっています。
語りかけるミドルボイスから、サビで感情が前へ出る
ボーカルにも、歌詞と同じ二重構造があります。
ヴァースでは、サブリナ・カーペンターの特徴でもある、息を少し混ぜたミドルレンジの声が中心です。強く押し出さず、会話の延長のような発音を使うため、まるで本人から恋愛話を聞かされているような距離まで声が近づいてきます。
特に皮肉な言葉ほど力まずに歌うのがポイントです。感情を大きく乗せないことで、「もちろんあなたには事情があるんでしょうね」という冷めたニュアンスが際立ちます。
一方、サビでは聴感上、息の割合を少し抑えながら響きを上方向へ移し、ミックスボイス寄りの伸びやかな発声へ切り替わります。
ヴァースでは感情を言葉の裏へ隠していたのに、サビでは旋律と声そのものが前へ出てくる。この切り替えによって、語り手が平気なふりをしているだけだと耳でも分かる構造になっています。
声量を一気に上げるのではなく、声の距離と響きを変えることで感情を大きくしているところに、サブリナらしい歌唱の巧さがあります。
リリックビデオも、悲劇ではなく「ショー」として見せる
公開されている公式映像は、ストーリー仕立ての通常MVではなくOfficial Lyric Videoです。
クラシックなスターを思わせる衣装やレトロな映像処理が使われ、曲の悲しさをそのまま暗い映像へ置き換える構成にはなっていません。
むしろ、傷ついた恋愛をひとつのショーとして華やかに見せることで、歌詞のユーモアとつながっています。
本当は笑える状況ではない。それでも笑い、着飾り、歌に変える。
その姿まで含めると「Such A Funny Way」は、ひどい恋人について歌う曲というだけでなく、失恋をジョークへ変換することで自分の側へ主導権を取り戻していく曲としても受け取れます。
『Man’s Best Friend』の最後に置くと、皮肉の奥に本音が見える
「Such A Funny Way」は『Man’s Best Friend』のボーナストラックとして発表され、2025年12月24日にストリーミングでも公開されました。
サブリナ自身も、この曲をアルバムのもうひとつの終わり方として捉えられる存在として紹介しています。
『Man’s Best Friend』では、恋愛や男性への苛立ちをユーモア、ダブルミーニング、軽快なポップへ変換する場面が繰り返されます。その流れのあとでこの曲を聴くと、笑いの裏側にあった感情が少しだけ露出したようにも聞こえます。
皮肉を言える余裕があるようで、本当は笑わなければ泣いてしまう。その境目まで声と歌詞で見せるからこそ、軽やかなサウンドのあとに言葉だけが残ります。
サブリナ・カーペンターが恋愛の失敗をどのようにポップソングへ変えてきたのか知りたいなら、「Espresso」「Please Please Please」など他の代表曲と並べて聴くと、ユーモアの使い方の違いも見えてきます。

