「La La Land」は単なる“夢の国”ではなく、ロサンゼルスやハリウッド、そして現実離れした芸能界を重ねた言葉です。
デミ・ロヴァートは、華やかな場所で別人に作り変えられそうになる違和感を、ギターの効いたポップロックに乗せて歌っています。
MVでは偽のトーク番組やパパラッチ、香水CMを並べ、スターを作る仕組みそのものを軽快に風刺しています。
「La La Land」は、夢の街と芸能界の“機械”を重ねる
英語の「La-la land」には、ロサンゼルスを指す呼び方に加え、現実から離れた夢想的な状態というニュアンスがあります。
この曲では、華やかなハリウッドだけでなく、人を一定のイメージへ押し込もうとする芸能界全体を表す言葉として使われています。歌詞に登場する「La La Land machine」という表現からも、スターが本人の意思とは別に生産されていく仕組みへの警戒が伝わります。
デミ・ロヴァート自身も、この曲について、ハリウッドで周囲から形を変えられそうになっても、自分らしさを保つことを歌ったものだと説明しています。
普通でいたいのではなく、自分で選びたい
歌詞では、ドレスにコンバースを合わせることや、完璧なモデルのように振る舞わないことが、自分らしさの具体例として示されます。
ここで語られているのは、スターであることを拒否して一般人に戻りたいという単純な願いではありません。服装も食事も振る舞いも、自分の意思で決めたいという主張です。
この曲が拒んでいるのは華やかさそのものではなく、華やかさのために人格まで編集されることです。
サビで歌声が一段前へ出ることで、その主張は迷いを含んだ独り言から、周囲へ向けた宣言へ変わっていきます。
トーク番組から香水CMへ、MVが並べるハリウッドの型
MVは、架空のトーク番組「Rumor Has It」でデミ・ロヴァートがインタビューを受ける場面から始まります。司会者にスターとしての生活を尋ねられ、その答えを示すように、誇張されたハリウッドの日常が映し出されます。
街で男性とぶつかっただけでパパラッチに撮影され、すぐに恋愛記事へ仕立てられる場面では、事実よりも話題が先に作られていく構造が見えます。
レッドカーペットではドレスにスニーカーを合わせた姿が注目され、香水CMの撮影ではピンクのウィッグや濃いメイクを施されます。本人が戸惑っていても、周囲は理想のスター像を完成させようと作業を続けます。
説明を重ねるのではなく、短い寸劇を次々と見せることで、MVは「自分ではない誰かにされる感覚」を目に見える形へ変えています。
甘いポップではなく、ギターで押し返す
「La La Land」は、デミ・ロヴァートのデビューアルバム『Don’t Forget』に収録された、ギター主導のポップロックです。Jonas Brothersが共作し、ギターやバックボーカルにも参加しています。
太く鳴るギターと歯切れのよいドラムが曲を前へ運び、サビではメロディと歌声が大きく開きます。軽快に聴こえる一方で、歌詞には常に周囲から観察され、評価される息苦しさがあります。
明るいメロディに反発心を乗せたことで、曲は説教調になりません。ビートに体が押し出される勢いが、そのまま「自分のままで進む」という態度につながっています。
2023年の再録が浮かび上がらせたロックの芯
デミ・ロヴァートは2023年、過去のヒット曲をロックサウンドで再構築した作品『Revamped』で、「La La Land」をギタリストのNita Straussとともに再録しました。
後年のバージョンではギターの重さが増していますが、原曲にもすでにロックへ向かう芯があります。声の強さ、周囲の期待への反発、自分の輪郭を守ろうとする歌詞は、後のキャリアで繰り返し表れる表現にもつながっています。
デビュー期の明るいディズニー・ポップとして聴くだけでは、この曲の半分しか見えてきません。
笑いを交えたMVの奥には、若いスターが「誰になるか」を自分で決めようとする、かなり切実な抵抗が刻まれています。
「La La Land」で見える初期のポップロックから、その後のバラード、ダンスポップ、ロック路線まで追うと、デミ・ロヴァートが一貫して歌ってきた自己肯定と葛藤の変化がより分かりやすくなります。

