「Eyes Closed」というタイトルは、目を閉じていてもできるほど慣れている、という強気な言葉として響きます。
けれどImagine DragonsのMVでは、その自信がただの勝利宣言ではなく、壊れそうな場所から立ち上がる姿として描かれています。
音の作りに注目すると、この曲は“強く見せること”そのものの危うさまで鳴らしているように感じられます。
「Eyes Closed」は、強さを装う人の言葉として響く
曲中で繰り返される「I could do this with my eyes closed」というフレーズは、直訳すれば「目を閉じていてもできる」という意味です。
英語では、慣れたことや自信のあることを表す表現としても使われます。つまりこの曲名は、単に視界を閉じることではなく、「どんな状況でもやれる」という態度を示す言葉として受け取れます。
ただし、この曲の面白さは、その言葉が完全な余裕だけでできていないところにあります。冒頭から“死から戻ってきた”ようなイメージが置かれ、強い言葉の背後に、言い切らなければ崩れてしまいそうな緊張が残ります。
MVは、砂と扉で“抜け出せない場所”を見せる
MVでは、Dan Reynoldsが砂の中から目を覚まし、現実ではないような空間を進んでいきます。古代遺跡のような場所、閉じた通路、複数の扉が並ぶ場面は、単なる冒険映像というより、意識の奥に迷い込んだようにも見えます。
扉は「出口」に見えますが、開けばすぐに救われるわけではありません。むしろ何度も選択を迫られることで、逃げ場を探している感覚が強まります。
タイトルの「目を閉じてもできる」という自信に対して、MVはずっと“どこへ進むべきか分からない画面”を置いています。このズレがあるから、曲の強気さは単純な無敵感ではなく、傷を抱えたまま前へ出る姿として見えてきます。
ラップロック寄りのビートが、言葉を前に押し出す
サウンドは、Imagine Dragonsらしい大きなロックの鳴りに、ラップ調の言葉運びやエレクトロニックな質感を重ねた作りです。ビートが重く刻まれるため、歌というよりも、言葉を一歩ずつ叩きつけていくような推進力があります。
サビでは声が前に出て、「できる」と言い切るフレーズが強く残ります。ただ、その勢いは明るい開放感というより、身体に力を入れて倒れないようにしている感覚に近いです。
公式リリースでも、この曲はオルタナティブ、ラップ、エレクトロニック、ロックの要素を混ぜた楽曲として紹介されています。実際に聴くと、その混ざり方はジャンルの幅広さを見せるためというより、迷いを振り切るために音を厚くしているように響きます。
『LOOM』期のImagine Dragonsが選んだ、新しい入口
「Eyes Closed」は、2024年のアルバム『LOOM』へ向かう入口となった曲です。『LOOM』は、終わりと始まりのどちらにも見えるような曖昧さを抱えた作品として語られており、この曲にもその感覚がよく出ています。
Dan Reynoldsは『LOOM』について、変化や新しい始まりを受け入れるような文脈で語っています。その中で「Eyes Closed」は、過去の痛みを消し去る曲ではなく、それを背負ったまま前に出る曲として置かれているように見えます。
Imagine Dragonsはこれまでも、不安や葛藤を大きなアンセムへ変えてきました。この曲では、その方法がさらに露骨です。弱さを隠すために声を張るのではなく、弱さがあるからこそ、声を張らずにいられない。
目を閉じることは、逃避ではなく前進にもなる
「Eyes Closed」という言葉は、一見すると現実を見ないことのようにも聞こえます。けれどこの曲では、目を閉じることが逃げるためではなく、怖さを抱えたまま進むための動作として響きます。
MVの扉や迷路のような空間も、答えをすぐに示してくれる場所ではありません。進んでもまた別の部屋があり、選んでもまた次の選択が来る。その構造は、人生の変化を完全にはコントロールできない感覚と重なります。
だからこそ、最後に残るのは「何も怖くない」という余裕ではありません。怖さを知っている人が、それでも足を止めない時の硬い表情です。
強気な曲ほど、内側のひびが見える
「Eyes Closed」は、聴き流すと力強いロックアンセムです。けれどMVと合わせて見ると、強さの表面よりも、その下にあるひびの方が記憶に残ります。
目を閉じても進めると言い切る声の裏で、画面はずっと出口を探しています。その食い違いが、この曲をただの自信満々なナンバーではなく、痛みを処理しきれないまま立ち上がる曲にしています。
Imagine Dragonsの代表曲をまとめて聴きたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

