比べられる恋を歌う「Like I Can」|サム・スミスMVで際立つ白黒の孤独

白黒の街を、スーツ姿のSam Smithが歩いていく。
「Like I Can」は、誰かと比べられる恋の中で、“それでも自分ほど君を愛せる人はいない”と訴える曲です。
軽快に進むサウンドとは裏腹に、歌詞の中心には選ばれない側の焦りと確信が残ります。

目次

「Like I Can」は“僕ほど愛せない”という確信の言葉

曲名の「Like I Can」は、直訳すると「僕ができるように」という意味です。
歌詞の流れでは、“他の誰かがどれだけ魅力的でも、自分のようには愛せない”という訴えとして響きます。

この曲で面白いのは、ただ弱々しく片想いを嘆くのではなく、相手に向かってかなりはっきりと言い切るところです。
Sam Smithの初期曲には、報われない恋や孤独を描くものが多くありますが、「Like I Can」はその痛みを、静かな涙ではなく前へ進むリズムに乗せています。

白黒のニューヨークが、感情を削ぎ落として見せる

MVは白黒映像で構成され、Sam Smithがスーツ姿の仲間たちと街を歩く姿が中心になります。
大きなストーリーを説明するというより、歩く、集まる、歌うという動きの中で、曲の持つ孤独と強がりを見せていく作りです。

色を抜いた画面だからこそ、表情や姿勢、集団の中にいるSam Smithの距離感が見えやすくなっています。
恋の歌でありながら、MVが甘いロマンスに寄りすぎないため、歌詞の“選ばれたい”という感情がよりまっすぐ残ります。

軽快なリズムなのに、言葉はかなり切実

「Like I Can」は、Sam Smithの代表的なバラード曲と比べるとテンポ感があります。
手拍子のように進むリズムと、前に出るボーカルによって、曲全体は沈み込みすぎません。

ただし、歌われている内容はかなり切実です。
相手のそばにいる別の誰かを並べ立てながら、最後には“でも自分ほどではない”という一点に戻ってくる。
この反復があることで、サビの言葉は自信というより、何度も自分に言い聞かせているようにも響きます。

バラードの人、だけではないSam Smithの初期像

Sam Smithといえば「Stay With Me」のような大きなバラードの印象が強い人も多いはずです。
一方で「Like I Can」は、初期Sam Smithが持っていたポップソウル寄りの軽やかさを分かりやすく伝えてくれます。

声の伸びや感情の濃さはそのままに、曲の足取りは意外と速い。
だからこそ、失恋や片想いの曲でありながら、ただ沈むだけではなく、相手の背中を追いかけるような勢いがあります。
音の作りに注目すると、この曲は悲しみを止めるのではなく、悲しみのまま歩かせる曲として聴こえてきます。

“比較される恋”をここまで率直に歌う強さ

この曲の鋭さは、恋の相手を責めきらないところにあります。
他の誰かに惹かれる可能性を認めたうえで、それでも自分の愛し方だけは違うと主張する。
その姿勢が、未練とプライドのちょうど間に立っているように見えます。

「Like I Can」は、きれいに諦める曲ではありません。
白黒のMV、前へ進むリズム、そして声の強さが重なることで、選ばれない側の感情が、弱さではなく輪郭のある言葉として残ります。

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