ファッション映画に響く「Material Lover」|シエナ・スパイロMVで読む欲望と輝き

SIENNA SPIRO(シエナ・スパイロ)の「Material Lover」は、映画『プラダを着た悪魔2』のために書き下ろされた新曲です。
MVとあわせて聴くと、単なる“物欲の歌”ではなく、ファッション、欲望、自己表現が重なったポップソングとして見えてきます。
タイトルの強さに対して、歌声は想像以上に生々しく、長く洋楽を聴いてきた耳にも「この若さでこの説得力か」と引っかかる一曲です。

【SIENNA SPIRO:シエナ・スパイロ】
生年月日:2005年9月28日
出身:イギリス・ロンドン
特徴:力強く艶のある歌声で注目を集めるシンガーソングライター
音楽性:ポップを軸に、ソウルやジャズの感性をにじませるボーカル表現が魅力

目次

「Material Lover」は何を意味しているのか

「Material Lover」を直訳すると、「物質的なものを愛する人」「素材やモノを愛する人」という意味になります。

ただし、この曲で面白いのは、そこに“浅はかな物欲”だけではないニュアンスがあるところです。

「material」には、物質、素材、生地、材料といった意味があります。ファッション映画の文脈で聴くと、ブランド品や高価なものへの憧れだけでなく、服の質感、手触り、見た目に心を動かされる感覚まで含んでいるように響きます。

つまり「Material Lover」は、ただ贅沢をしたい人というより、目に見える美しさや手で触れられるものを通して、自分の気分を取り戻す人として読むとしっくりきます。

『プラダを着た悪魔2』のために書き下ろされた一曲

「Material Lover」は、2026年5月1日にリリースされ、同日にMVも公開された楽曲です。

大きなポイントは、映画『プラダを着た悪魔2』のためにシエナ・スパイロが書き下ろした新曲であること。さらに、同日リリースのオリジナル・サウンドトラックにも収録されています。

『プラダを着た悪魔』という作品は、ファッションの華やかさだけでなく、仕事、憧れ、自己変化、そして少しの苦さを描いてきた物語です。

その続編に向けた楽曲として「Material Lover」を聴くと、曲名の“material”がかなり効いてきます。服やバッグのような目に見えるものは、ときに虚飾にも見える。けれど同時に、それは自分を立て直すための鎧にもなる。そうした二面性が、この曲の芯にあります。

MVでは“欲しいものを欲しいと言う強さ”に注目したい

この曲のMVを見るときは、まず「Material Lover」というタイトルが持つ堂々とした響きに注目したいところです。

現代のポップソングでは、欲望を隠さずに歌うことが、自己肯定の表現になることがあります。「欲しい」「美しいものが好き」「触れられるものに惹かれる」と言うことは、必ずしも軽さではありません。

むしろこの曲では、そうした感覚を否定されても、自分の感性を手放さない姿勢が見えてきます。

映画のために書かれた曲として考えると、MVもまた、ファッションを単なる飾りではなく、気分や態度を変えるスイッチとして見せているように受け取れます。長く洋楽のMVを見ていると、こういう“きらびやかさの奥にある少しの反抗心”が、ポップソングを長く残す要素になることがあります。

歌詞は“浅さ”ではなく、感覚への正直さを歌っている

「Material Lover」の歌詞で重要なのは、物質的なものを愛することを、ただ悪いものとして描いていない点です。

歌の語り手は、見た目や手触り、買えるもの、飾れるものに惹かれる自分を隠していません。一方で、そこには人とのつながりや、ページをめくるように気分を変えたい感覚も重なっています。

ここでの「superficial」という言葉は、「表面的な」「浅はかな」という意味を持ちます。誰かからそう見られるかもしれない。でも語り手は、それでも自分が惹かれるものを否定しない。

このバランスがいいです。単なるラグジュアリー礼賛ではなく、“見た目に惹かれることも、自分らしさの一部ではないか”と問いかけているように聴こえます。

シエナ・スパイロの歌声が、曲に奥行きを与えている

シエナ・スパイロは、2005年ロンドン生まれのシンガーソングライターです。

2024年に「NEED ME」でデビューし、2025年の「Die On This Hill」では全英シングルチャートTOP10入り、Spotify Global ChartでもTOP10に入るなど、急速に注目を集めています。

「Material Lover」で印象的なのは、若いポップスターらしい軽やかさだけでなく、声に少しクラシックな重みがあることです。

ポップで映画的な曲なのに、歌声が軽く流れすぎない。そこに、シエナ・スパイロらしい強さがあります。ファッション映画のサウンドトラック曲としての華やかさを持ちながら、声の奥にあるソウル感が、曲を単なるタイアップソングで終わらせていません。

「Runway」とあわせて聴くと、映画の世界が立体的になる

『プラダを着た悪魔2』の音楽として見るなら、Lady GagaとDoechiiによる「Runway」とあわせて聴くのも自然です。

「Runway」がファッションショーのような強さやパフォーマンス性を前に出す曲だとすれば、「Material Lover」はもう少し内側にある欲望や感覚に寄った曲として楽しめます。

同じ映画の世界にありながら、片方はステージの照明を浴びるような曲、もう片方は“美しいものに触れたときの個人的な高揚”をすくい上げる曲。そう考えると、サウンドトラック全体の見え方も少し変わってきます。

シエナ・スパイロの「Material Lover」は、華やかなだけでなく、欲しいものを欲しいと言うことの強さまで映したポップソングです。MVを見返すときは、ファッションのきらめきだけでなく、その奥にある“自分の感性を守る態度”にも注目したくなります。

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この記事を書いた人

洋楽とミュージックビデオを約30年にわたり楽しんできました。ポップ、R&B、ロック、EDMを中心に、時代ごとのヒット曲やアーティストの代表曲、ミュージックビデオの表現を追いかけています。

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