シャキーラ(Shakira)の「La La La (Brazil 2014)」は、2014年FIFAワールドカップの公式ソングそのものではありません。大会の公式ソングはPitbull、Jennifer Lopez、Claudia Leitteによる「We Are One (Ole Ola)」で、「La La La」は公式アルバム『One Love, One Rhythm』に収録されたワールドカップ関連曲です。
しかも完全な新曲ではなく、シャキーラの「Dare (La La La)」を大会向けに作り替えたバージョン。ブラジルのCarlinhos Brownを迎え、サッカー、ダンス、ブラジル、世界の一体感を前面に出したことで、原曲とはかなり違う役割を持つ曲になりました。
「Dare (La La La)」がワールドカップの歌へ変わった
「La La La (Brazil 2014)」を理解する一番の近道は、元になった「Dare (La La La)」との違いを見ることです。
原曲「Dare (La La La)」は、シャキーラの2014年のセルフタイトル・アルバム『Shakira.』に収録されたダンスポップ曲。「Dare」には「挑んでみて」「やってみて」と相手を煽るようなニュアンスがあり、サビでもその挑発的な勢いがフックになっています。
Brazil 2014版では、この「挑戦する」という芯を残しながら、歌詞の視野が一気にスタジアム規模へ広がります。
サッカーボール、ホイッスル、リオ、さまざまな国の人々といったイメージが加わり、「一人の相手への挑発」だった感覚が、「世界中が見ている舞台で、恐れず飛び込め」というスポーツの高揚感へ置き換えられているのです。
つまり「La La La」は単にワールドカップ用の歌詞を後付けしただけではありません。原曲にあった“Dare=挑戦”という言葉が、試合に臨む選手や観客にも通じる意味へ拡張されたところが面白いポイントです。
シャキーラの代表曲や、ラテンとダンスポップを行き来してきたキャリア全体を見ておくと、この曲が彼女らしい理由もより分かりやすくなります。

実は「2014年W杯公式ソング」ではない
「La La La (Brazil 2014)」はワールドカップとの結びつきが非常に強いため、2014年大会の公式ソングだと思われやすい曲です。
ただし、FIFAとSony Musicが発表した2014年大会の音楽では役割が分かれていました。
公式ソングはPitbull feat. Jennifer Lopez & Claudia Leitte「We Are One (Ole Ola)」。公式アンセムはSantana、Wyclef Jean、Avicii、Alexandre Piresによる「Dar um Jeito (We Will Find A Way)」です。
一方、「La La La (Brazil 2014)」は『One Love, One Rhythm: The Official 2014 FIFA World Cup Album』に収録された楽曲。つまり、「公式ソング」ではないものの、FIFA公式アルバムを構成するワールドカップ楽曲の一つという位置づけです。
この違いを知っておくと、歴代ワールドカップ曲を調べたときに「We Are One」と「La La La」の両方が2014年大会の曲として出てくる理由も整理できます。
歴代大会の公式ソングや関連曲を年代順にたどるなら、こちらで全体像を確認できます。

Carlinhos Brownが加えた「開催国ブラジル」の体温
Brazil 2014版で重要なのが、ブラジル出身のミュージシャン、Carlinhos Brownの参加です。
原曲の「Dare (La La La)」は電子的なダンスビートが軸ですが、Brazil 2014版ではブラジルを直接連想させるリズムと言葉が加わり、スタジアムや街の祝祭へ近づいています。
ここでCarlinhos Brownは、単なる「feat.のゲスト」にとどまりません。
シャキーラが担う世界規模のポップ感に対して、Brownの声やリズムが開催国側の輪郭を与える。結果として、世界中の人が歌えるポップソングでありながら、「2014年のブラジル」という場所を感じられる仕上がりになっています。
タイトルの「La La La」自体にも複雑な意味はありません。だからこそ、言語が違う観客でも一緒に声を重ねやすい。歌詞の意味を細かく説明するより、声、ビート、身体の動きを共有することが、この曲では重要になっています。
MVはサッカーの勝敗より「世界が同じ場所に集まること」を映す
公式MVでは、シャキーラのダンスとサッカーのイメージが交互に現れ、Neymarをはじめとするサッカー選手たちも登場します。
ただし、試合の名場面を並べただけのスポーツ映像ではありません。
子どもたち、ダンサー、さまざまな文化を思わせる衣装や人物、ボールを使った動きが次々につながり、「どの国が勝つか」よりも「世界中から人が集まる」ことへ視線が向けられています。
この構成は歌詞ともよく重なります。
国名やサッカーの動きを思わせる言葉が登場する一方、中心にあるのは国同士を分けることではなく、同じリズムに乗ること。映像でも、競技としてのサッカーと祝祭としてのダンスの境界がかなり曖昧です。
さらに、このMVはActiviaと国連世界食糧計画(WFP)の学校給食支援キャンペーンとも結びついていました。公式動画の説明でもWFPのSchool Meals initiativeへの支援が案内されており、映像に多くの子どもたちが登場することにも、単なるワールドカップ映像以上の背景があります。
華やかなサッカーMVとして見るだけでなく、スポーツイベントが生む世界規模の注目を別の活動へつなげた映像でもあったのです。
「Waka Waka」と比べると、La La Laの立ち位置がはっきりする
シャキーラとワールドカップの組み合わせで最も有名なのは、2010年南アフリカ大会の「Waka Waka (This Time for Africa)」でしょう。
ただし、この2曲は似ているようで成り立ちが違います。
「Waka Waka」は2010年大会の公式ソングとして制作され、アフリカの音楽的ルーツと大会そのものが楽曲の中心にあります。
対して「La La La (Brazil 2014)」は、もともと存在した「Dare (La La La)」というダンス曲をブラジル大会仕様へ変化させたものです。
そのため「Waka Waka」には最初から大会アンセムとしての強さがあり、「La La La」にはクラブやダンスフロアからスタジアムへ飛び出してきたような軽快さがあります。
2010年の公式ソングがどのように作られ、なぜ「Waka Waka」という言葉が使われているのかは、こちらで元ネタまで詳しく解説しています。

この違いを知ると、「La La La」が「Waka Wakaの次のワールドカップ公式曲」ではないことも見えてきます。同じシャキーラのワールドカップ曲でも、片方は大会の公式ソング、もう片方は既存曲を大会の祝祭へ接続した公式アルバム収録曲なのです。
閉会式まで進んで完成した「Brazil 2014」という別バージョン
「La La La (Brazil 2014)」は公式ソングではありませんでしたが、大会との結びつきは公式アルバムだけで終わりませんでした。
シャキーラは2014年ワールドカップの閉会式にも出演し、Carlinhos Brownとともにこの曲を披露しています。
そこで重要なのは、タイトルに付いた「Brazil 2014」が単なる販売上の副題ではなくなったことです。
アルバムで聴くだけなら「Dare」のワールドカップ版ですが、選手や観客が集まる大会の最後の舞台で演奏されたことで、このバージョン自体が2014年大会の記憶と強く結びつきました。
だから現在でも「2014年ワールドカップのシャキーラの曲」として思い出されやすい一方、公式ソングの名称を調べると「We Are One」が出てくる。この一見した食い違いは、公式ソングかどうかと、大会を象徴する曲として記憶されたかどうかが別だからです。
シャキーラはその後もワールドカップと結びついた楽曲を発表しています。2026年の「Dai Dai」まで追うと、「Waka Waka」「La La La」と続いてきた彼女とサッカーの関係をさらに広い時間軸で見ることができます。

「La La La (Brazil 2014)」の面白さは、最初からワールドカップのためだけに作られた曲ではないところにあります。
「Dare」という一対一の挑戦を思わせるダンス曲が、Carlinhos Brown、ブラジル、サッカー、世界中の観客を取り込みながら、巨大な祝祭の曲へ姿を変えていく。その変化そのものが、2014年版を原曲とは別の一曲として聴かせています。
