“It’s Time”というタイトルは、「今こそ始める時だ」という前向きな合図に聞こえます。
ただしImagine Dragonsのこの曲が強いのは、ただ前へ進むだけでなく、「自分自身は変えない」と歌っているところです。
MVでは、荒れた大地に小さな光を埋めるような映像が、そのメッセージを言葉より先に見せています。
「It’s Time」は、変化の歌であり、変わらないための歌でもある
「It’s Time」は直訳すれば「その時だ」「今がその時だ」という意味です。
歌詞では、新しく始めること、下から上へ進んでいくことが歌われます。一方で、サビの核にあるのは「I’m never changing who I am」という、自分の根本は変えないという宣言です。
つまりこの曲は、変化を拒む歌ではありません。むしろ、環境や立場が変わっても、自分の中心だけは差し出さないための歌として響きます。
タイトルの「時」は、別人になるための合図ではなく、自分のまま次の場所へ進むための合図です。
荒れた大地に光を植えるMV
MVでは、バンドメンバーが荒れた広い土地を歩き、箱の中にある光を取り出して地面へ埋めていきます。
壊れたもの、乾いた景色、曇った空の中に、彼らが小さな光を置く。その流れは、歌詞にある「底から上へ向かう」感覚と自然につながっています。
映像をただの終末風の演出として見るよりも、「何もない場所に、もう一度始まりを作る」物語として見ると、このMVの見え方が変わります。
派手な勝利の映像ではなく、手で土を掘り、光を埋めるという小さな動作から始まるところに、この曲らしい誠実さがあります。
机を叩くようなビートが、決意を身体に近づける
サウンド面でまず耳に残るのは、足踏みや手拍子のように鳴るリズムです。
この曲は、巨大なロックサウンドで最初から押し切るのではなく、身体の近くにある打音から始まるような感触があります。だからこそ、サビで声が広がったときにも、言葉が遠くのスローガンではなく、自分の胸の内側から出てくる決意のように聞こえます。
Dan Reynoldsは後年、この曲を大学を離れて音楽へ向かおうとしていた時期に書いたと語っています。さらに、特徴的なストンプ・クラップの感覚についても、机を叩く動きに由来するものとして語られています。
音の作りに注目すると、この曲の強さは「大きく鳴ること」よりも、「最初の一歩を踏む音」がずっと残り続けるところにあります。
『Night Visions』期のImagine Dragonsを知る入口
「It’s Time」は、Imagine Dragonsのデビューアルバム『Night Visions』に収録された楽曲です。
同じアルバムには「Radioactive」や「Demons」も収録されていますが、「It’s Time」はそれらに比べると、よりフォークポップ寄りの明るさと、ロックバンドらしい上昇感が前に出ています。
「Radioactive」が重さと爆発力でバンドの存在感を示した曲だとすれば、「It’s Time」は、彼らが大きな場所へ向かう前の足音をそのまま残した曲です。
初期のImagine Dragonsを知るうえで、この曲はかなり重要です。完成された巨大なアンセムというより、これから大きくなるバンドの決意が、まだ手触りを残したまま鳴っているからです。
歌詞の前向きさは、きれいごとで終わらない
「It’s Time」は前向きな曲として聴かれることが多いですが、歌詞の中には疲れや失敗、場所を離れる感覚もあります。
それでも曲全体が暗く沈まないのは、サビでリズムと声が開けるからです。落ち込んだ状態を否定するのではなく、その状態を抱えたまま「始める時だ」と言っているように響きます。
ここで歌われる前向きさは、何でも明るく変換するタイプのポジティブさではありません。傷や迷いを消さずに、それでも歩き出すための前向きさです。
今あらためて聴くと、2010年代のロックポップらしい大きな高揚感の中に、手作業で火を起こすような素朴な力が残っている曲だと感じます。
次に聴きたいImagine Dragonsの曲
「It’s Time」でImagine Dragonsの初期の前向きさに触れたら、同じ『Night Visions』期の「Radioactive」や「Demons」へ進むと、バンドの振れ幅がより分かりやすくなります。
光を植えるように始まったこの曲は、彼らが巨大なロックバンドへ向かう前の、まっすぐな宣言として今も残っています。
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