LISA「Tarantino」のタイトルが指しているのは、映画監督クエンティン・タランティーノです。2026年10月23日にEP『PRESS PLAY』とともに発表されたこの曲では、『Kill Bill』や『Death Proof』といったタランティーノ作品の名前まで歌詞に登場します。
つまり「Tarantino」は、単に“映画っぽい雰囲気”を表す言葉ではありません。映画監督の名前、作品への言及、MVのアクション、そしてEP名『PRESS PLAY』までが一つにつながった、映画そのものを遊び場にした楽曲です。
「Tarantino」の元ネタはクエンティン・タランティーノ
曲名の“Tarantino”は、映画監督クエンティン・タランティーノへの直接的なオマージュとして捉えるのが最も自然です。
タランティーノは『Pulp Fiction』『Kill Bill』『Death Proof』などで知られる監督。LISAの歌詞にも『Kill Bill』と『Death Proof』が固有名詞として組み込まれており、タイトルだけ借りているわけではありません。
ただし、ここでいう「元ネタ」はサンプリングとは別です。今回確認した公式・主要資料では、タランティーノ映画の台詞や音源をサンプリングしたと公式に示す情報は確認できませんでした。
この曲のポイントは、映画の音をそのまま使うことよりも、タランティーノ作品を連想させる“危険で大胆な主人公像”をLISA自身に重ねていることにあります。
『Kill Bill』『Death Proof』が示すのは「私がアクション映画の主人公」という感覚
歌詞はタランティーノ本人について説明する内容ではありません。
むしろLISA自身が映画の中へ入り込み、ボスやアクションスターのように振る舞う構成です。銃、スタント、刀を思わせる言葉や映画用語が次々と現れ、日常の出来事までスクリーン上のワンシーンのように変えていきます。
その中で『Kill Bill』は、ためらわず前へ進む強烈なキャラクター性を示す記号として機能します。一方の『Death Proof』は、危険やスタントを恐れない姿勢と結びつきます。
そのため「Tarantino」は、タランティーノ映画について歌った曲というより、LISAがタランティーノ映画の主人公になったような自己演出を楽しむ曲と考えると分かりやすいです。
歌詞の中で映画を意味する言葉と「再生する」という発想が繰り返されるのも、EPタイトル『PRESS PLAY』へ自然につながっています。
ホテルを突き進むMVは、歌詞の“映画ごっこ”を本物のミッションへ変える
MVでは、LISAが敬愛する映画監督タランティーノへ手紙を届けるため、ホテルの中を進んでいきます。
ただ手紙を届けるだけではありません。行く手を阻む相手と次々に戦い、アクションとダンスを挟みながら目的地を目指すという、一本のスパイ/アクション映画のような構成になっています。
監督を務めたのはJames Mackel。制作会社Object & Animalのクレジットでも、ホテルを舞台にしたミッション形式と、タランティーノ作品を思わせる映像言語が作品の軸として説明されています。
ここが「Tarantino」の面白いところです。
歌詞だけなら、LISAが自分を映画スターのように見せる比喩としても成立します。しかしMVでは、本当にミッションを遂行する主人公としてLISAを配置することで、歌詞の“私は映画そのもの”という感覚を映像へ拡張しています。
『PRESS PLAY』では「Tarantino」が映画コンセプトを最も分かりやすく見せる
『PRESS PLAY』は全6曲を収録したEPで、作品全体が映画をイメージして制作されています。
タイトルの“PRESS PLAY”は「再生ボタンを押す」という意味。音楽をただ聴くのではなく、再生した瞬間から一本の映画を見るように楽しむという考え方が作品全体に置かれています。
そのコンセプトを理解するうえで、「Tarantino」は非常に分かりやすい一曲です。
監督名をタイトルにし、実在する映画作品を歌詞へ入れ、MVそのものまでアクション映画として作る。曲・言葉・映像がすべて「映画」という同じ方向を向いています。
同じ『PRESS PLAY』につながる「SaWaDiKa」は、タイ語の挨拶やバンコクを通してLISA自身のルーツを前へ出した曲でした。

「SaWaDiKa」が“どこから来たLISAなのか”を見せる曲だとすれば、「Tarantino」は“どんなスクリーンの主人公になりたいのか”を大胆に演じる曲です。同じEPの中でも、LISAの見せ方が大きく切り替わっています。
これまでの「LALISA」「ROCKSTAR」「NEW WOMAN」なども含め、LISAがソロ活動でどのように自己像を変えてきたのかは、代表曲まとめでも続けて確認できます。

だからこそ「Tarantino」というタイトルを映画監督の名前だと知るだけで、この曲の見え方は大きく変わります。
『Kill Bill』や『Death Proof』は単なる映画ネタではなく、LISA自身を危険で大胆なアクション映画の主人公へ変えるための共通言語。そして『PRESS PLAY』というEPタイトルまで含めて見ると、「Tarantino」は映画へのオマージュであると同時に、LISA自身がスクリーンの主役になるための一曲だと分かります。

